【宅建】手付金等の保全措置は"いくらから"必要?未完成・完成の基準を表で整理

宅建業法の手付金等の保全措置を徹底整理。未完成物件は代金の5%超または1,000万円超、完成物件は10%超または1,000万円超という基準、「手付金等」に含まれるものと含まれないもの、買主が登記を備えたときなど保全が不要になる例外、未完成は2方法・完成は3方法という保全の手段の違い、措置を講じない場合に買主が支払を拒めること、業者間取引には適用がないことまで。確認問題つきで解説します。

最終更新:2026-08-10

8種制限の中でも、手付金等の保全措置は毎年のように出題される定番です。数字が4つ(5%・10%・1,000万円・そして代金)出てくるうえ、「手付金等」に何が含まれるかという別の論点も絡むため、混乱しやすい分野でもあります。

逆に言えば、表を1枚と例外を3つ覚えれば確実に取れます。順に整理していきましょう。

なぜ保全措置が必要なのか

マンションを買うとき、完成前に契約して手付金を払うことがあります。ところが引渡し前に売主の業者が倒産したらどうなるでしょうか。

物件は手に入らず、払ったお金も戻ってきません。買主は住まいも資金も失います。実際に過去、業者の倒産で多くの購入者が被害を受けました。

そこで宅建業法は、業者が一定額を超えるお金を受け取る場合、**万一のときに買主へ返還されるしくみを先に用意しておけ**と義務づけました。これが保全措置です。

この趣旨が分かると、後で出てくる例外の理由も自然に理解できます。買主が保護される状態になっていれば、保全は要らないのです。

【最重要】いくらから必要か

基準は物件の状態によって変わります。

物件の状態保全措置が必要になる額
未完成物件(工事完了前)代金の5%を超える、または1,000万円を超えるとき
完成物件(工事完了後)代金の10%を超える、または1,000万円を超えるとき

未完成のほうが基準が厳しい(少額でも保全が必要)のは、リスクが高いからです。まだ建っていない物件は、本当に完成するか分かりません。完成済みの物件なら現物があるので、危険度が下がります。

判定で注意したいのは、**「超える」であって「以上」ではない**点です。代金5,000万円の未完成物件なら5%は250万円。250万円ちょうどなら保全不要、250万1円で必要になります。設問では「ちょうど」の金額がよく出ます。

また、5%と1,000万円は**どちらかを超えれば必要**です。代金3億円の未完成物件では5%が1,500万円ですが、1,000万円を超えた時点で保全措置が必要になります。高額物件では1,000万円の基準が先に効いてきます。

確認問題(保全が必要な額)

宅建業者Aが自ら売主となり、一般の買主Bと代金4,000万円の未完成物件の売買契約を締結する場合、保全措置を講じずに受領できる手付金等の最高額はどれか。

  1. 200万円
  2. 400万円
  3. 1,000万円
  4. 制限なし

正解:1

正解は①。未完成物件は代金の5%を超えると保全措置が必要です。4,000万円×5%=200万円なので、200万円ちょうどまでは保全措置なしで受領できます。200万円を超えると保全措置が必要になります。

「手付金等」に含まれるもの

次に、何が計算に入るのかです。条文の定義はこうなっています。

手付金等とは、**契約締結の日以後、物件の引渡し前に支払われる金銭**で、**代金に充当されるもの**をいいます。名目は問いません。

支払われるもの手付金等に含まれるか
手付金含まれる
中間金含まれる
内金含まれる
申込証拠金(契約後に代金へ充当)含まれる
引渡し後に支払われる残代金含まれない
固定資産税の精算金など代金に充当されないもの含まれない

重要なのは、**名目ではなく実質で判断する**ことです。「中間金」という名前でも、引渡し前に払われて代金に充当されるなら手付金等に含まれます。業者が名前を変えて規制を逃れられないようにしているわけです。

そして計算は**累計**で行います。手付金200万円を受け取った後で中間金300万円を受け取るなら、合計500万円が基準を超えるかで判断します。「1回ごとに基準未満だからセーフ」にはなりません。

なお、基準を超える場合に保全すべきなのは**それまでに受領した全額**です。超過分だけを保全すればよいのではありません。

保全措置が不要になる例外

例外は主に2つです。

1つ目は、**買主が所有権の登記を備えたとき**、または所有権の移転登記がされたときです。登記を得た買主は、業者が倒産しても物件を確保できます。守られる状態が既にあるので、保全は不要になります。

2つ目は、受領額が先ほどの基準以下のときです。少額なら被害も限定的だという割り切りです。

ここで「引渡しを受けたとき」も不要では、と思うかもしれませんが、条文が挙げているのは登記です。引渡しだけでは第三者に対抗できないため、保護として不十分だからです。

確認問題(保全不要の場面)

手付金等の保全措置に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

  1. 買主が所有権の登記を備えた場合でも、保全措置を講じなければならない。
  2. 中間金は名目が異なるため、手付金等には含まれない。
  3. 手付金と中間金は合算して基準額を判断する。
  4. 基準額を超える場合、超過部分についてのみ保全措置を講じれば足りる。

正解:3

正解は③。手付金等は累計で判断します。①買主が登記を備えた場合は保全措置が不要になります。②名目を問わず、引渡し前に支払われ代金に充当されるものは手付金等に含まれます。④超過分だけでなく、受領済みの全額について保全措置が必要です。

保全の方法は「未完成2つ・完成3つ」

保全の手段にも違いがあります。

方法未完成物件完成物件
銀行等による保証使える使える
保険事業者による保証保険使える使える
指定保管機関による保管**使えない**使える

未完成物件で指定保管機関による保管が使えないのは、この方式が「お金を第三者に預けておく」だけの仕組みだからです。未完成物件では工事を進めるための資金が必要で、預けたままではそもそも建物が完成しません。物件が完成しなければ買主も困るので、資金を動かせる保証・保険の形をとる必要があります。

覚え方は「未完成は2つ、完成は3つ。増えるのは指定保管機関」。ここは数を問う形でも、方式名を入れ替える形でも出題されます。

措置を講じないとどうなるか

業者が必要な保全措置を講じない場合、**買主は手付金等の支払を拒むことができます**。

そして支払を拒んでも、買主の債務不履行にはなりません。業者の側が先に義務を果たしていないからです。「払わないから契約解除だ」と言われることはありません。

この効果は買主にとって強力な武器です。設問では「買主は履行遅滞となる」といった誤りの肢で出てきます。

もう一歩:業者間には適用されない

最後に、8種制限に共通する大前提を確認します。

手付金等の保全措置も8種制限の1つなので、**買主が宅建業者である場合には適用されません**。プロ同士なら相手の信用力を判断できるからです。

設問の1行目に「宅地建物取引業者Bを買主として」と書かれていたら、金額がいくらであっても保全措置は不要になります。数字の計算に入る前に、まず当事者を確認する習慣をつけてください。

また、業者が売主ではなく媒介として関わっているだけの場合も適用外です。保全義務を負うのは、自ら売主となる業者だけです。

確認問題(適用の有無と方法)

手付金等の保全措置に関する次の記述のうち、宅地建物取引業法の規定によれば、誤っているものはどれか。

  1. 未完成物件については、指定保管機関による保管の方法をとることができない。
  2. 買主が宅地建物取引業者である場合、保全措置は不要である。
  3. 業者が保全措置を講じない場合、買主は手付金等の支払を拒むことができる。
  4. 完成物件については、銀行等による保証の方法をとることができない。

正解:4

正解は④(誤り)。完成物件では銀行等による保証・保険事業者による保証保険・指定保管機関による保管の3つすべてが使えます。①未完成では指定保管機関が使えません。②③はいずれも正しい記述です。

試験ポイント:①未完成は代金の5%超または1,000万円超、完成は10%超または1,000万円超で保全が必要。「超える」であって「以上」ではない。②手付金等は名目を問わず、引渡し前に支払われ代金に充当されるもの。累計で判断し、超えたら受領済み全額を保全。③買主が登記を備えれば保全不要。④方法は未完成2つ・完成3つ(指定保管機関は完成のみ)。⑤講じなければ買主は支払を拒め、履行遅滞にならない。⑥業者間には適用なし。

確認問題(まとめ)

数字と例外を両方確認しましょう。

確認問題(保全措置の総合)

宅建業者Aが自ら売主となり、宅建業者でない買主Bと代金5,000万円の完成物件の売買契約を締結した。次の記述のうち、正しいものはどれか。

  1. Aは、手付金として500万円を受領する場合、保全措置を講じる必要がある。
  2. Aは、保全措置を講じることなく手付金として600万円を受領することができる。
  3. Aが手付金300万円を受領した後、中間金400万円を受領する場合、保全措置は不要である。
  4. Bが所有権の登記を備えた後は、保全措置を講じる必要がない。

正解:4

正解は④。買主が登記を備えれば保全措置は不要です。①完成物件の基準は代金の10%=500万円で、500万円ちょうどは「超える」に当たらないため保全措置は不要です。②600万円は500万円を超えるので保全措置なしには受領できません。③合計700万円となり500万円を超えるため保全措置が必要です。

確認問題(未完成と完成の比較)

代金3,000万円の物件について、保全措置を講じずに受領できる手付金等の額として正しい組合せはどれか。

  1. 未完成 300万円 / 完成 150万円
  2. 未完成 150万円 / 完成 300万円
  3. 未完成 150万円 / 完成 150万円
  4. 未完成 1,000万円 / 完成 1,000万円

正解:2

正解は②。未完成は5%=150万円、完成は10%=300万円までが保全措置なしで受領できる額です。いずれも1,000万円には達しないため、1,000万円基準は問題になりません。未完成のほうが基準が厳しい点に注意してください。

まとめ

手付金等の保全措置は、業者が倒産しても買主のお金が守られるようにする制度です。この目的を軸に置くと、細かいルールがすべて説明できます。

未完成のほうが基準が厳しいのはリスクが高いから。買主が登記を備えれば不要になるのは、すでに守られているから。未完成で指定保管機関が使えないのは、資金を止めると工事が進まないから。

覚える数字は「未完成5%・完成10%・共通1,000万円」の3つだけです。あとは累計で判断すること、超えたら全額を保全すること、業者間には適用がないこと。この5点で本試験の設問はほぼカバーできます。

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よくある質問

手付金等の保全措置はいくらから必要ですか?

未完成物件では代金の5%を超えるか1,000万円を超えるとき、完成物件では代金の10%を超えるか1,000万円を超えるときに必要です。「超える」であって「以上」ではないため、5%ちょうど・10%ちょうどの額であれば保全措置なしで受領できます。

「手付金等」には何が含まれますか?

契約締結の日以後、物件の引渡し前に支払われる金銭で、代金に充当されるものすべてです。名目は問わないため、手付金・中間金・内金・契約後に代金へ充当される申込証拠金がいずれも含まれます。判定は累計額で行います。

保全措置が不要になるのはどんな場合ですか?

買主が所有権の登記を備えたとき、または所有権移転登記がされたときです。登記があれば業者が倒産しても買主は物件を確保できるため、保全の必要がなくなります。受領額が基準以下の場合も不要です。

未完成物件と完成物件で保全の方法に違いはありますか?

あります。未完成物件では銀行等による保証と保険事業者による保証保険の2つしか使えません。完成物件ではこれに加えて指定保管機関による保管も使えます。未完成で保管方式が使えないのは、資金を預けたままでは工事が進まないためです。

業者が保全措置を講じない場合、買主はどうすればよいですか?

手付金等の支払を拒むことができます。支払を拒んでも買主の債務不履行にはならないため、それを理由に契約を解除されることもありません。なお買主が宅建業者である場合は、そもそも保全措置の規定が適用されません。

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