【宅建】盛土規制法をわかりやすく整理|2つの区域・許可の規模要件・届出を表で攻略
宅地造成及び特定盛土等規制法(盛土規制法)を宅建試験向けに整理。宅地造成等工事規制区域と特定盛土等規制区域の違い、許可が必要な盛土・切土の高さと面積(1m・2m・500㎡/2m・5m・3,000㎡)、3つの届出(21日以内・14日前・14日以内)、中間検査・定期報告・罰則までを表とゴロで一気に攻略します。
最終更新:2026-08-08
法令上の制限の中で、ここ数年ひときわ狙われやすくなった分野があります。盛土規制法です。
正式名称は「宅地造成及び特定盛土等規制法」。もともとは昭和36年にできた宅地造成等規制法という古い法律でしたが、2021年に静岡県熱海市で起きた盛土の崩落による土石流災害をきっかけに全面改正され、2023年5月26日に新しい法律として施行されました。名前が変わっただけでなく、規制の枠組みそのものが作り直されています。
試験対策として厄介なのは、古いテキストや古い過去問の記憶がそのまま使えないことです。逆に言えば、新しい枠組みを正確に押さえた人が確実に1点を拾える分野でもあります。この記事では、2つの区域の違い・許可が必要になる規模の数字・3種類の届出という、出題の中心になる部分を表で整理します。
なぜ法律が作り直されたのか(改正の背景)
旧法である宅地造成等規制法は、その名のとおり「宅地」の造成を規制する法律でした。ところが熱海の災害で崩れた盛土は、宅地として造成されたものではありませんでした。森林や農地に建設残土が積まれ、それが誰の目も届かないまま崩落したのです。
つまり旧法には、土地の用途による規制のスキマがありました。宅地なら規制されるが、森林や農地に土を積むぶんには網がかからない。新しい盛土規制法は、この穴を塞ぐために作られています。キーワードは「スキマのない規制」です。
具体的には、規制の対象を宅地に限定せず、農地・森林を含めて危険な盛土等を規制できるようにし、都道府県知事が区域を指定して網をかける方式に変わりました。ここが出題の土台になるので、まずこの発想を頭に入れてください。
最重要:2つの規制区域を区別する
盛土規制法を理解する第一歩は、区域が2種類あることを押さえることです。どちらも都道府県知事(指定都市・中核市ではその長)が指定します。
| 区域 | どんな場所に指定されるか | 規制の強さ |
|---|---|---|
| 宅地造成等工事規制区域 | 市街地や集落など、人家等が近く、盛土等が崩壊すると被害を及ぼしうる区域 | 強い(小さい規模から許可が必要) |
| 特定盛土等規制区域 | 人家等からは離れているが、崩壊すれば下流の人家等に被害を及ぼしうる区域 | 中程度(届出+大規模なら許可) |
イメージとしては、家のすぐそばが「宅地造成等工事規制区域」、山あいの上流部が「特定盛土等規制区域」です。人家に近いほうが厳しく、遠いほうが緩い。ごく当たり前の話ですが、この上下関係が分かっていると、後で出てくる数字の大小もすんなり頭に入ります。
なお、区域の指定にあたって知事は、あらかじめ基礎調査(土地の地形・地質等の調査)を行います。指定は関係市町村長の意見を聴いたうえで行われ、公示によって効力を生じます。
確認問題(規制区域)
盛土規制法の規制区域に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 宅地造成等工事規制区域は、市町村長が指定する。
- 規制の対象となるのは宅地の造成のみであり、農地や森林における盛土は対象外である。
- 特定盛土等規制区域は、人家等から離れていても、崩壊により被害を及ぼしうる区域に指定される。
- 2つの区域は、いずれか一方しか指定することができない。
正解:3
正解は③。①指定するのは都道府県知事(指定都市・中核市ではその長)です。②旧法と異なり、現行の盛土規制法は農地・森林を含めて規制します(スキマのない規制)。④両区域はそれぞれの趣旨で指定されるもので、択一の関係ではありません。
規制される3つの行為を整理する
次に、何をすると規制されるのかを押さえます。条文上の用語は3つです。
- 宅地造成……宅地以外の土地を宅地にするために行う盛土・切土で、一定規模を超えるもの
- 特定盛土等……宅地または農地等において行う盛土・切土で、周辺に危害を及ぼしうる一定規模を超えるもの
- 土石の堆積……土石を一定期間たい積する行為で、一定規模を超えるもの(最終的に除去するものを含む)
注目したいのは3つ目の「土石の堆積」です。旧法にはなかった概念で、いずれ撤去する予定の一時的な残土置き場であっても規制対象になります。熱海の事案がまさにこれで、「置いているだけ」を野放しにしない、という改正の意図が表れた部分です。試験でもここは狙われます。
【表】宅地造成等工事規制区域内で許可が必要な規模
いよいよ数字です。宅地造成等工事規制区域内で宅地造成等に関する工事を行う場合、工事主はあらかじめ都道府県知事の許可を受けなければなりません。ただし、すべての工事が許可対象になるわけではなく、次の規模を超えるものが対象です。
| 工事の種類 | 許可が必要となる規模 |
|---|---|
| 盛土(崖を生じるもの) | 高さ1mを超える崖を生じる盛土 |
| 切土(崖を生じるもの) | 高さ2mを超える崖を生じる切土 |
| 盛土と切土を同時に行う場合 | 合わせて高さ2mを超える崖を生じるもの |
| 盛土(崖を生じないもの) | 高さ2mを超える盛土 |
| 面積による基準 | 盛土・切土をする土地の面積が500㎡を超えるもの |
土石の堆積については、高さ2mを超え、かつ面積300㎡を超えるもの、または面積500㎡を超えるものが許可の対象です。
数字は「1・2・2・2・500」と並べて覚えるのが早道です。盛土で崖を生じる場合だけが1mで、それ以外の高さはすべて2m、面積は500㎡。なぜ盛土だけ厳しいのかというと、盛土は人工的に積んだ土で、地山を削る切土に比べて崩れやすいからです。理屈が分かっていれば、本番で数字が入れ替えられても気づけます。
確認問題(許可の規模)
宅地造成等工事規制区域内で行う次の工事のうち、都道府県知事の許可が不要なものはどれか。
- 高さ1.5mの崖を生じる盛土工事
- 高さ1.5mの崖を生じる切土工事
- 崖を生じない高さ3mの盛土工事
- 面積600㎡の切土工事
正解:2
正解は②。切土で許可が必要なのは「高さ2mを超える崖」を生じる場合なので、1.5mでは規模に達しません。①盛土は1m超の崖で許可対象、③崖を生じなくても盛土2m超は対象、④面積500㎡超は対象です。
【表】特定盛土等規制区域は「届出」と「許可」の二段構え
特定盛土等規制区域内では、まず届出が基本になり、規模が大きいものだけが許可の対象になります。この二段構えが、もう一つの出題ポイントです。
届出については、工事主は工事に着手する日の30日前までに、工事の計画を都道府県知事に届け出なければなりません。届出が必要となる規模は、宅地造成等工事規制区域で許可が必要となる規模(1m・2m・2m・2m・500㎡)と同じ数字です。
そのうえで、次の大規模なものについては届出では足りず、許可が必要になります。
| 工事の種類 | 許可が必要となる規模 |
|---|---|
| 盛土(崖を生じるもの) | 高さ2mを超える崖を生じる盛土 |
| 切土(崖を生じるもの) | 高さ5mを超える崖を生じる切土 |
| 盛土と切土を同時に行う場合 | 合わせて高さ5mを超える崖を生じるもの |
| 盛土(崖を生じないもの) | 高さ5mを超える盛土 |
| 面積による基準 | 盛土・切土をする土地の面積が3,000㎡を超えるもの |
土石の堆積は、高さ5mを超え、かつ面積1,500㎡を超えるもの、または面積3,000㎡を超えるものが許可対象です。
こちらは「2・5・5・5・3000」。宅地造成等工事規制区域の「1・2・2・2・500」と並べると、すべて2倍以上に緩くなっているのが分かります。人家から離れている区域だから基準が緩い、という先ほどのイメージがそのまま数字になっているわけです。2つの表を別々に丸暗記するのではなく、対で覚えてください。
確認問題(特定盛土等規制区域)
特定盛土等規制区域内における工事に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 工事主は、工事に着手した日から30日以内に届け出なければならない。
- 工事主は、工事に着手する日の30日前までに工事の計画を届け出なければならない。
- この区域内では、規模にかかわらずすべての工事について許可が必要である。
- この区域内では、届出も許可もいっさい不要である。
正解:2
正解は②。特定盛土等規制区域では、着手する日の30日前までの事前届出が原則です。③大規模なもの(盛土2m超の崖・切土5m超の崖・面積3,000㎡超など)だけが許可の対象で、すべてではありません。
混同しやすい3つの「届出」
盛土規制法には、これとは別に3種類の届出があります。期間の数字が21日・14日・14日と紛らわしく、ひっかけの定番です。表で一気に整理します。
| どんな場合 | 誰が | いつまでに |
|---|---|---|
| 区域の指定時に、すでに工事が行われている場合 | 工事主 | 指定があった日から21日以内 |
| 高さ2mを超える擁壁や排水施設等を除却する工事 | 工事をする者 | 工事に着手する日の14日前まで |
| 公共施設用地を宅地または農地等に転用した場合 | 転用した者 | 転用した日から14日以内 |
区別のコツは「前か、後か」です。これから壊す(擁壁の除却)ものだけが事前の14日前まで。すでに始まっている工事と、すでに転用してしまった土地は、事後の届出(21日以内・14日以内)になります。危険を生じさせる行為は事前に、状態の報告は事後に、と考えると筋が通ります。
確認問題(届出)
盛土規制法上の届出に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 宅地造成等工事規制区域の指定の際、当該区域内で既に工事を行っている工事主は、指定日から14日以内に届け出なければならない。
- 高さ2mを超える擁壁の除却工事を行う者は、工事に着手する日の21日前までに届け出なければならない。
- 公共施設用地を宅地に転用した者は、転用した日から14日以内に届け出なければならない。
- これらの届出は、いずれも市町村長に対して行う。
正解:3
正解は③。①は21日以内、②は14日前までです(数字が入れ替えられています)。④届出先は都道府県知事(指定都市・中核市ではその長)です。
許可を受けた後の手続き
許可は「取ったら終わり」ではありません。改正のもう一つの柱が、工事中と工事後の監視強化です。
まず、許可を申請する前の段階で、工事主は周辺住民への説明など、周知のための措置を講じることが求められます。次に、一定規模を超える盛土等については、工事の途中で中間検査を受けなければなりません。さらに、工事期間中は3ヶ月ごとに工事の実施状況を知事に報告する義務があります。そして工事が完了したら、完了検査を受け、技術的基準に適合していると認められれば検査済証が交付されます。
着手前・工事中・完了時のすべての段階でチェックが入る、という流れをつかんでおけば、細かい規定を問われても方向性を外しません。
もう一歩:土地の保全義務と罰則の強化
見落とされがちですが、規制区域内の土地については、その所有者・管理者・占有者に、常時安全な状態に維持するよう努める保全義務が課されています。ここで重要なのは、この義務が「自分で工事をした人」に限られない点です。過去に他人が造成した土地を買った所有者にも、保全に努める義務があります。
そして知事は、災害防止のために必要な場合、土地の所有者等に対して勧告を行うことができ、さらに危険な状態にあるときは改善命令を出すことができます。無許可で工事を行った場合などには、工事の停止や是正の命令(監督処分)も可能です。
罰則も旧法から大幅に強化されました。無許可で工事を行った者や命令に違反した者には3年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金が科され、法人が違反した場合には最大3億円という重い罰金が科されます。熱海の災害を受けた法改正であることが、ここにもはっきり表れています。
試験ポイント:①区域は2つ(人家に近い=厳しい/遠い=緩い)、②宅地造成等工事規制区域は「1・2・2・2・500」で許可、③特定盛土等規制区域は着手30日前までの届出+「2・5・5・5・3000」で許可、④届出は21日以内・14日前まで・14日以内の3つ、⑤許可権者も届出先も都道府県知事(指定都市・中核市はその長)。数字の入れ替えと、許可と届出のすり替えが出題の二大パターンです。
確認問題(まとめ)
記事の内容が身についたか、確認しましょう。
確認問題(盛土規制法の総合)
盛土規制法に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 規制区域内の土地の所有者は、その土地を常時安全な状態に維持するよう努めなければならない。
- 土石の堆積は、最終的に除去する予定のものであっても規制の対象となることがある。
- 宅地造成等工事規制区域内では、面積500㎡を超える切土工事について許可が必要である。
- 規制区域内の土地の保全義務を負うのは、自ら造成工事を行った者に限られる。
正解:4
正解は④(誤り)。保全義務は土地の所有者・管理者・占有者に課されるもので、自ら工事をした者に限られません。他人が造成した土地を購入した所有者も対象です。①②③はいずれも正しい記述です。
確認問題(規模の比較)
特定盛土等規制区域内において、許可が必要となる規模として正しいものはどれか。
- 高さ1mを超える崖を生じる盛土
- 面積500㎡を超える切土
- 高さ5mを超える崖を生じる切土
- 崖を生じない高さ2mを超える盛土
正解:3
正解は③。特定盛土等規制区域で許可が必要なのは、盛土2m超の崖・切土5m超の崖・合わせて5m超の崖・崖を生じない盛土5m超・面積3,000㎡超です。①②④はいずれも宅地造成等工事規制区域における許可の規模(=特定盛土等規制区域では届出の規模)です。
まとめ
盛土規制法は、熱海の土石流災害を受けて旧・宅地造成等規制法を全面改正し、2023年5月26日に施行された法律です。最大の特徴は、宅地に限らず農地・森林も含めて規制する「スキマのない規制」に変わったことにあります。
試験対策としては、まず2つの区域を区別すること。人家に近い宅地造成等工事規制区域は「1・2・2・2・500」で許可、離れた特定盛土等規制区域は着手30日前までの届出が基本で、「2・5・5・5・3000」の大規模なものだけが許可。数字が2倍以上に緩くなるという対比で覚えれば、丸暗記より確実に残ります。
あとは3つの届出(21日以内・14日前まで・14日以内)と、許可権者が都道府県知事であること。ここまで押さえれば、この分野の1点は取り切れます。新しい法律のぶん受験生の対策も手薄になりやすいので、差をつけるチャンスです。
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よくある質問
盛土規制法はいつから施行されましたか?
2023年(令和5年)5月26日に全面施行されました。2021年の熱海市の土石流災害を受けて、旧・宅地造成等規制法(昭和36年制定)を全面改正したもので、正式名称は「宅地造成及び特定盛土等規制法」です。
宅地造成等工事規制区域と特定盛土等規制区域の違いは?
前者は人家等が近く崩壊すると被害が及ぶ区域で、規制が厳しく、盛土1m超の崖・切土2m超の崖・面積500㎡超などで許可が必要です。後者は人家から離れているものの下流に被害が及びうる区域で、着手30日前までの届出が基本、盛土2m超の崖・切土5m超の崖・面積3,000㎡超など大規模なものだけが許可対象になります。
許可を出すのは誰ですか?
都道府県知事です。指定都市・中核市の区域内では、その市の長が許可権者になります。届出先も同じく都道府県知事(指定都市・中核市ではその長)です。
農地や森林に土を盛る場合も規制されますか?
されます。旧法は「宅地」の造成を規制する法律でしたが、現行の盛土規制法は農地・森林を含めて危険な盛土等を規制対象とします。これが改正の最大のポイントである「スキマのない規制」です。
土を一時的に置くだけでも対象になりますか?
なります。「土石の堆積」として規制対象で、最終的に除去する予定の一時的なたい積であっても、一定規模(宅地造成等工事規制区域では高さ2m超かつ面積300㎡超、または面積500㎡超)を超えれば許可が必要です。