宅建 令和2年度(2020年)問2 権利関係 の解説
問題
次の1から4までの記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。
- ケース①の保証契約は、口頭による合意でも有効であるが、ケース②の保証契約は、書面でしなければ効力を生じない。
- ケース①の保証契約は、Cが個人でも法人でも極度額を定める必要はないが、ケース②の保証契約は、Eが個人でも法人でも極度額を定めなければ効力を生じない。
- ケース①及びケース②の保証契約がいずれも連帯保証契約である場合、BがCに債務の履行を請求したときはCは催告の抗弁を主張することができるが、DがEに債務の履行を請求したときはEは催告の抗弁を主張することができない。
- 保証人が保証契約締結の日前1箇月以内に公正証書で保証債務を履行する意思を表示していない場合、ケース①のCがAの事業に関与しない個人であるときはケース①の保証契約は効力を生じないが、ケース②の保証契約は有効である。
正解
正解は選択肢 4 です。
解説
正解は選択肢4です。民法465条の6第1項は、事業のために負担する債務を主たる債務とする保証契約(事業用融資の保証)において、保証人が事業に関与しない個人である場合、保証契約締結の日前1箇月以内に公正証書で保証債務を履行する意思を表示しなければ、その保証契約は効力を生じないと定めています。ケース①はこの要件に該当するため、公正証書がなければ無効となります。一方、ケース②の保証人Fが法人である場合や、Dの事業に関与する個人である場合(同条2項の例外)には、公正証書は不要であり、保証契約は有効となるため、選択肢4は正しい記述となります。
・民法第446条第2項(保証契約の方式) ・民法第454条(連帯保証の場合の特則) ・民法第465条の2第2項(個人根保証契約の極度額) ・民法第465条の6第1項、第2項(事業用融資の個人保証における公正証書による意思表示)
【選択肢1】誤り。 保証契約は、主たる債務者(お金を借りる人)と保証人との間で締結される契約ですが、民法第446条第2項により、書面でしなければその効力を生じません。これは、保証人が安易に保証人となることを防ぎ、保証契約の内容を明確にするための規定です。したがって、ケース①の保証契約も、ケース②の保証契約も、口頭による合意だけでは有効とはならず、書面でなければ効力を生じません。よって、「口頭による合意でも有効である」とする記述は誤りです。 【選択肢2】誤り。 「極度額」とは、保証人が責任を負う上限額のことです。民法第465条の2第2項は、不特定の債務(例えば、継続的な取引から生じる将来の債務)を保証する「根保証契約」において、保証人が個人の場合(これを「個人根保証契約」といいます)には、極度額を定めなければその効力を生じないと定めています。これは、個人の保証人が過大な責任を負うことを防ぐための規定です。 ケース①のCが個人の場合で、かつAの事業資金の借入れが継続的な取引を前提とする根保証契約であれば、極度額を定める必要があります。したがって、「Cが個人でも法人でも極度額を定める必要はない」という記述は誤りです。また、極度額の要否は保証人(ケース②ではF)が個人か法人かによって決まるものであり、債権者(ケース②ではE)が個人か法人かは関係ありません。よって、全体として誤りです。 【選択肢3】誤り。 「連帯保証契約」とは、保証人が主たる債務者と連帯して債務を負担する保証契約のことです。通常の保証人には、債権者がまず主たる債務者に請求すべきだと主張できる「催告の抗弁権」(民法第452条)や、主たる債務者に弁済する資力があり、かつ執行が容易であることを証明して、まず主たる債務者の財産から執行すべきだと主張できる「検索の抗弁権」(民法第453条)が認められています。しかし、民法第454条により、連帯保証人にはこれらの抗弁権が認められていません。したがって、ケース①及びケース②の保証契約がいずれも連帯保証契約である場合、BがCに債務の履行を請求したときも、DがE(正しくは保証人F)に債務の履行を請求したときも、連帯保証人であるCやFは催告の抗弁を主張することはできません。よって、「Cは催告の抗弁を主張することができる」とする記述は誤りです。 【選択肢4】正しい。 民法第465条の6第1項は、事業のために負担する債務(事業用融資など)を主たる債務とする保証契約において、保証人が個人である場合、保証契約締結の日前1箇月以内に公正証書で保証債務を履行する意思を表示していなければ、その保証契約は効力を生じないと定めています。これは、個人の保証人を保護するための重要な規定です。 ケース①では、Aが事業資金を借り入れ、CがAの事業に関与しない個人であるため、この民法第465条の6第1項の要件に該当します。したがって、公正証書による意思表示がなければ、ケース①の保証契約は効力を生じません。この記述は正しいです。 一方、ケース②の保証契約については、保証人Fが法人である場合や、FがDの事業に関与する個人である場合(例えば、Dが法人の場合の取締役など、民法第465条の6第2項に定める例外に該当する場合)には、公正証書による意思表示は不要とされています。これらの場合には、公正証書がなくても保証契約は有効となります。したがって、「ケース②の保証契約は有効である」という記述も、これらの可能性を考慮すれば正しいと判断できます。よって、選択肢4は全体として正しい記述です。