宅建 令和2年度(2020年)問3 権利関係 の解説

問題

次の1から4までの契約に関する記述のうち、民法の規定及び下記判決文によれば、誤っているものはどれか。 (判決文) 法律が債務の不履行による契約の解除を認める趣意は、契約の要素をなす債務の履行がないために、該契約をなした目的を達することができない場合を救済するためであり、当事者が契約をなした主たる目的の達成に必須的でない附随的義務の履行を怠ったに過ぎないような場合には、特段の事情の存しない限り、相手方は当該契約を解除することができないものと解するのが相当である。

  1. 土地の売買契約において、売主が負担した当該土地の税金相当額を買主が償還する付随的義務が定められ、買主が売買代金を支払っただけで税金相当額を償還しなかった場合、特段の事情がない限り、売主は当該売買契約の解除をすることができない。
  2. 債務者が債務を履行しない場合であっても、債務不履行について債務者の責めに帰すべき事由がないときは付随的義務の不履行となり、特段の事情がない限り、債権者は契約の解除をすることができない。
  3. 債務不履行に対して債権者が相当の期間を定めて履行を催告してその期間内に履行がなされない場合であっても、催告期間が経過した時における債務不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、債権者は契約の解除をすることができない。
  4. 債務者が債務を履行しない場合であって、債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したときは、債権者は、相当の期間を定めてその履行を催告することなく、直ちに契約の解除をすることができる。

正解

正解は選択肢 2 です。

解説

正解は選択肢2です。民法543条は、契約解除の要件として債務者の「責めに帰すべき事由」(帰責事由)を要求していません。債務不履行があれば、原則として解除は可能であり、債務者の帰責事由の有無と、その債務が「付随的義務」であるか否かは別の問題であるため、選択肢2の記述は誤りとなります。

【民法541条(催告による解除)】 債務者がその債務を履行しない場合において、債権者が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、債権者は、契約の解除をすることができる。 【民法542条(催告によらない解除)】 債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合など、一定の事由があるときは、債権者は催告をすることなく直ちに契約の解除をすることができる。 【民法543条(解除権行使の効果)】 解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない。この条文は、解除の要件として債務者の帰責事由を要求していないことを示唆しています。 【判例(本問題文の判決文の趣旨)】 契約の解除は、契約の主たる目的達成を阻害するような重大な債務不履行があった場合に認められるものであり、当事者が契約をなした主たる目的の達成に必須的でない附随的義務の履行を怠ったに過ぎないような場合や、債務不履行が軽微である場合には、原則として契約を解除することはできない。

【選択肢1】正。 土地の売買契約における「税金相当額の償還」は、土地の引渡しや代金支払いといった契約の主たる目的達成に必須的な義務ではなく、付随的な義務と解されます。判決文の趣旨によれば、「当事者が契約をなした主たる目的の達成に必須的でない附随的義務の履行を怠ったに過ぎないような場合」には、特段の事情がない限り、相手方は当該契約を解除することができないとされています。したがって、買主が税金相当額を償還しなかったとしても、特段の事情がない限り、売主は売買契約を解除することはできないという記述は正しいです。 【選択肢2】誤。 債務不履行による契約解除は、債務不履行の事実があれば、原則として可能です。民法543条は、解除の要件として債務者の「責めに帰すべき事由」(帰責事由)を要求していません。例えば、不可抗力によって債務が履行できなくなった場合(債務者に帰責事由がない場合)でも、債務不履行であることに変わりはなく、債権者は契約を解除することができます(ただし、危険負担の問題も考慮されます)。「債務不履行について債務者の責めに帰すべき事由がないとき」と「付随的義務の不履行」は全く別の概念であり、混同してはいけません。したがって、債務者の帰責事由がない場合に「付随的義務の不履行となり」解除できないとする記述は誤りです。 【選択肢3】正。 民法541条は、催告による解除を定めていますが、判例は、催告期間が経過した時点での債務不履行が「その契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるとき」は、解除権の行使を制限し、契約の解除を認めないとしています。これは、解除権の行使が債務者にとって過酷な結果をもたらすことを防ぎ、解除権の濫用を制限する趣旨であり、本問題文の判決文の趣旨(解除は重大な債務不履行に限られる)とも整合します。したがって、解除できないとする記述は正しいです。 【選択肢4】正。 民法542条1項5号は、債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したときは、債権者は、相当の期間を定めてその履行を催告することなく、直ちに契約の解除をすることができると定めています。これは、催告をしても無意味であるため、催告を不要とする例外的な解除事由の一つです。したがって、この記述は正しいです。

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