宅建 令和2年度(2020年)問1 権利関係 の解説

問題

次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

  1. 甲土地が共有物の分割によって公道に通じない土地となっていた場合には、Aは公道に至るために他の分割者の所有地を、償金を支払うことなく通行することができる。
  2. Aは公道に至るため甲土地を囲んでいる土地を通行する権利を有するところ、Aが自動車を所有していても、自動車による通行権が認められることはない。
  3. Aが、甲土地を囲んでいる土地の一部である乙土地を公道に出るための通路にする目的で賃借した後、甲土地をBに売却した場合には、乙土地の賃借権は甲土地の所有権に従たるものとして甲土地の所有権とともにBに移転する。
  4. Cが甲土地を囲む土地の所有権を時効により取得した場合には、AはCが時効取得した土地を公道に至るために通行することができなくなる。

正解

正解は選択肢 1 です。

解説

正解は選択肢1です。共有物の分割によって公道に通じない土地(袋地)が生じた場合、民法212条の特則により、他の分割者の所有地を償金を支払うことなく通行することができます。これは、分割前の土地全体が公道に接していたことを考慮し、分割によって不利益を被る者が出ないよう公平を図るための規定です。

【民法210条(公道に至るための他の土地の通行権)】 他の土地に囲まれて公道に通じない土地(袋地)の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地(囲繞地)を、その土地の利用のために必要な範囲で通行することができる。この場合において、通行の場所及び方法は、これを受けるべき他の土地のために最も損害の少ないものを選ばなければならない。 【民法212条(分割による通行権)】 共有物の分割によって公道に通じない土地が生じたときは、その土地の所有者は、公道に至るため、他の分割者の所有地のみを通行することができる。この場合においては、償金を支払うことを要しない。 【民法213条(償金の支払い)】 前二条の規定により通行権を有する者は、その通行する他の土地の損害に対し、償金を支払わなければならない。ただし、前条の場合には、償金を支払うことを要しない。 【判例:最判平成18年3月16日】 囲繞地通行権の範囲は、袋地の利用状況や社会経済状況の変化に応じて、自動車による通行も認められる場合があることを示しています。

【選択肢1】正。 この選択肢は、民法212条の規定そのものです。共有物(例えば、もともと一つの大きな土地)を分割した結果、一部の土地が公道に接しない「袋地」となってしまった場合、その袋地の所有者は、他の分割者の所有地(囲繞地)を公道に至るために通行することができます。そして、この場合の通行権は、民法213条ただし書きにより「償金を支払うことを要しない」とされています。これは、分割前の土地全体は公道に接していたはずであり、分割によって袋地となった者にだけ償金負担を負わせるのは不公平であるという考え方に基づいています。試験では、通常の囲繞地通行権(民法210条)と、分割・一部譲渡による囲繞地通行権(民法212条)の違い、特に「償金の有無」がよく問われるポイントですので、しっかり区別して覚えましょう。 【選択肢2】誤。 囲繞地通行権は、民法210条により「その土地の利用のために必要な範囲」で認められます。この「必要な範囲」は、袋地の利用状況や社会経済状況の変化に応じて判断されるべきものです。かつては徒歩による通行が主でしたが、現代社会においては、自動車の利用が不可欠な場合も少なくありません。判例(最判平成18年3月16日など)も、袋地の利用状況や周囲の状況を考慮し、自動車による通行が袋地の利用のために必要と認められる場合には、自動車による通行権も認められることがあるとしています。したがって、「自動車による通行権が認められることはない」と断定する記述は誤りです。ただし、自動車通行が認められる場合でも、囲繞地所有者への損害が最小限になるような場所・方法を選ぶ必要があります。 【選択肢3】誤。 賃借権は、特定の物を使用収益する権利ですが、これは「債権」であり、物に対する直接的な支配権である「物権」(所有権など)とは性質が異なります。賃借権は、賃貸人との間の契約に基づいて発生する権利であり、原則として、賃貸人の承諾がなければ第三者に譲渡したり、転貸したりすることはできません(民法612条)。一方、囲繞地通行権は、袋地であるという事実に基づいて法律上当然に発生する「法定物権」です。この選択肢では、乙土地の賃借権が甲土地の所有権に「従たるものとして」移転するとありますが、賃借権は所有権に当然に従属して移転するものではありません。甲土地の所有権がBに移転しても、乙土地の賃借権が自動的にBに移転するわけではなく、別途賃貸人の承諾を得て賃借権を譲渡する手続きが必要です。したがって、この記述は誤りです。 【選択肢4】誤。 囲繞地通行権は、袋地である限り、法律上当然に発生し存続する「法定物権」です。これは、囲繞地(通行される側の土地)の所有者が誰であるかに関わらず、袋地の所有者が公道に出るために必要な権利として認められています。したがって、囲繞地の所有権が時効取得によってCに移転したとしても、そのことによって袋地の所有者Aの囲繞地通行権が消滅することはありません。囲繞地通行権は、土地の物理的な状況(袋地であること)に基づいて発生する権利であり、所有者の変更によって影響を受けるものではないからです。したがって、「通行することができなくなる」という記述は誤りです。

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