宅建 平成22年度(2010年)問3 民法 の解説
問題
所有権及びそれ以外の財産権の取得時効に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
- 土地の賃借権は、物権ではなく、契約に基づく債権であるので、土地の継続的な用益という外形的かつ客観的事実が存在したとしても、時効によって取得することはできない。
- 自己の所有と信じて占有している土地の一部に、隣接する他人の土地の筆の一部が含まれていても、他の要件を満たせば、当該他人の土地の一部の所有権を時効によって取得することができる。
- 時効期間は、時効の基礎たる事実が開始された時を起算点としなければならず、時効援用者において起算点を選択し、時効完成の時期を早めたり遅らせたりすることはできない。
- 通行地役権は、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り、時効によって取得することができる。
正解
正解は選択肢 1 です。
解説
正解は選択肢1です。土地の賃借権は物権ではなく債権ですが、判例は、継続的な用益という外形的かつ客観的事実が認められる場合には、時効取得の対象となると判断しています。したがって、「時効によって取得することはできない」とする選択肢1は誤りとなります。
・**民法第162条(所有権の取得時効)**:20年間、所有の意思をもって、平穏かつ公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。善意でかつ過失なく占有を始めた場合は10年間で取得する。所有権の取得時効に関する基本条文です。 ・**民法第163条(所有権以外の財産権の取得時効)**:所有権以外の財産権も、継続して行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り、時効によって取得することができます。この条文が、賃借権や地役権の時効取得の根拠となります。 ・**民法第283条(地役権の時効取得)**:地役権は、継続的かつ表現なものに限り、時効によって取得することができます。地役権の特殊な性質を考慮した規定です。 ・**民法第284条(継続的かつ表現な地役権)**:前条の規定は、継続的かつ表現なものに限り適用される。特に通行地役権の場合、通路の開設など、外形的な事実が必要であることを示しています。 ・**判例(賃借権の時効取得)**:土地の賃借権も、継続的な用益という外形的かつ客観的事実が認められる場合には、時効取得の対象となるとされています(最判昭和42年10月26日)。債権であっても時効取得の対象となる場合があることを示す重要な判例です。 ・**判例(時効の起算点)**:時効の起算点は、時効の基礎となる事実が発生した時点であり、客観的に確定されるべきものであって、時効援用者が任意に選択することはできないとされています(最判昭和35年7月26日)。時効制度の安定性を保つための原則です。
【選択肢1】誤。 土地の賃借権は、物権ではなく、特定の相手方に対して土地を使用する権利を主張できる「債権」です。一般的に、時効取得の対象は物権が中心ですが、判例(最判昭和42年10月26日)は、土地の賃借権であっても、継続的な用益という外形的かつ客観的事実が認められる場合には、時効取得の対象となると判断しています。例えば、他人の土地を賃料を支払うことなく長期間にわたり継続して使用し、その事実が外形的に認識できる状態であれば、賃借権を時効取得できる可能性があります。したがって、「時効によって取得することはできない」とする本記述は誤りです。宅建試験では、債権であっても時効取得できるものがあることをしっかり押さえておきましょう。 【選択肢2】正。 取得時効の対象は、一筆の土地全体に限らず、その一部であっても可能です。判例も、土地の一部について、他の要件(所有の意思、平穏、公然、善意無過失または悪意による占有の継続)を満たせば、その部分の所有権を時効取得できるとしています。例えば、隣地との境界が不明確なまま、自己の土地と信じて隣地の一部を長年占有し続けていた場合などがこれに該当します。したがって、本記述は正しいです。 【選択肢3】正。 時効の起算点とは、時効期間がいつからスタートするかという時点のことです。判例(最判昭和35年7月26日など)は、時効の起算点は、時効の基礎となる事実(例えば、占有を開始した時)が開始された時であり、客観的に確定されるべきものであって、時効を援用する者(時効の利益を受ける者)が任意に選択し、時効完成の時期を早めたり遅らせたりすることはできないとしています。もし任意に選択できるとすると、時効制度の安定性が損なわれるためです。したがって、本記述は正しいです。 【選択肢4】正。 地役権は、民法第163条により、所有権以外の財産権として時効取得の対象となります。ただし、地役権の性質上、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限られます(民法第283条、第284条)。特に通行地役権の場合、単に他人の土地を通行するだけでは足りず、通路の開設など、その地役権の存在を外部から認識できるような設備が継続的に存在していることが必要となります。例えば、他人の土地に私道を開設して長年通行しているようなケースです。したがって、本記述は正しいです。