宅建 令和1年度(2019年)問9 権利関係 の解説

問題

AがBに対して金銭の支払を求めて訴えを提起した場合の時効の中断に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

  1. 訴えの提起後に当該訴えが取り下げられた場合には、特段の事情がない限り、時効中断の効力は生じない。
  2. 訴えの提起後に当該訴えの却下の判決が確定した場合には、時効中断の効力は生じない。
  3. 訴えの提起後に請求棄却の判決が確定した場合には、時効中断の効力は生じない。
  4. 訴えの提起後に裁判上の和解が成立した場合には、時効中断の効力は生じない。

正解

正解は選択肢 4 です。

解説

正解は選択肢4です。裁判上の和解は、確定判決と同一の効力を有し、当事者間の権利関係を確定させるため、時効中断(2020年4月1日施行の改正民法では「時効の更新」)の効力が生じます(民法147条2項1号、民事訴訟法267条)。したがって、「時効中断の効力は生じない」とする本選択肢は誤りです。

【民法147条(時効の完成猶予及び更新)】 2020年4月1日施行の改正民法では、「時効の中断」は「時効の更新」に、「時効の停止」は「時効の完成猶予」に名称が変更されました。本問は旧法の「時効の中断」という言葉を使っていますが、実質的な内容は改正民法147条で理解できます。 * **1項1号(裁判上の請求)**:裁判上の請求は、時効の完成を猶予する事由となります。 * **2項1号(確定判決等による更新)**:完成猶予期間中に、確定判決や確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定した場合には、その確定の時から新たに時効の進行が始まります(時効の更新)。 【民事訴訟法267条(和解調書等の効力)】 裁判上の和解は、確定判決と同一の効力を有します。 【判例(大判大9.11.26)】 訴えの取下げ、却下、請求棄却の場合には時効中断の効力が生じないが、裁判上の和解が成立した場合には時効中断の効力が生じる、とされています。

【選択肢1】正。 訴えが提起されたとしても、その後に当該訴えが取り下げられた場合、その訴えは初めからなかったものとみなされます(民事訴訟法262条2項)。したがって、時効中断(改正民法では時効の完成猶予及び更新)の効力は生じません。これは判例(大判大9.11.26)の趣旨にも合致する、正しい記述です。 【選択肢2】正。 訴えの却下とは、訴訟要件(例えば、当事者能力や訴えの利益など)を満たさないために、裁判所が本案審理(権利の存否についての判断)に入らずに訴えを排斥する判決です。権利の存否について判断がなされていないため、時効中断(更新)の効力は生じません。これも判例(大判大9.11.26)の趣旨に合致する、正しい記述です。 【選択肢3】正。 請求棄却とは、裁判所が本案審理を行った結果、原告の請求に理由がない(例えば、債権が存在しない、すでに弁済済みであるなど)と判断し、原告の請求を認めない判決です。この場合、原告の主張する権利が存在しないことが確定するため、時効を中断(更新)させるべき権利が存在しないことになります。したがって、時効中断(更新)の効力は生じません。これも判例(大判大9.11.26)の趣旨に合致する、正しい記述です。 【選択肢4】誤。 裁判上の和解は、当事者双方が合意して紛争を解決する手続きであり、その和解調書は確定判決と同一の効力を有します(民事訴訟法267条)。これにより、当事者間の権利関係が確定するため、時効中断(改正民法では時効の更新)の効力が生じます(民法147条2項1号)。判例(大判大9.11.26)も、裁判上の和解が成立した場合には時効中断の効力が生じるとしています。したがって、「時効中断の効力は生じない」とする本選択肢は誤りです。

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