宅建 平成30年度(2018年)問2 権利関係 の解説
問題
Aが、所有する甲土地の売却に関する代理権をBに授与し、BがCとの間で、Aを売主、Cを買主とする甲土地の売買契約(以下この問において「本件契約」という。)を締結した場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
- Bが売買代金を着服する意図で本件契約を締結し、Cが本件契約の締結時点でこのことを知っていた場合であっても、本件契約の効果はAに帰属する。
- AがBに代理権を授与するより前にBが補助開始の審判を受けていた場合、Bは有効に代理権を取得することができない。
- BがCの代理人にもなって本件契約を成立させた場合、Aの許諾の有無にかかわらず、本件契約は無効となる。
- AがBに代理権を授与した後にBが後見開始の審判を受け、その後に本件契約が締結された場合、Bによる本件契約の締結は無権代理行為となる。
正解
正解は選択肢 4 です。
解説
正解は選択肢4です。代理権は、代理人が後見開始の審判を受けたときに消滅します(民法111条1項2号)。したがって、代理権消滅後に締結された契約は無権代理行為となり、本人に効果は帰属しません。
【民法93条ただし書(心裡留保の類推適用)】 心裡留保とは、表意者が冗談などで真意ではないことを知ってした意思表示を指します。原則としてその意思表示は有効ですが、相手方が表意者の真意でないことを知っていた、または知ることができた場合は無効となります。代理人が自己の利益を図る目的で代理権を濫用した場合、相手方がその意図を知っていたり、知ることができた場合は、この規定が類推適用され、本人に効果が帰属しない(無効となる)とされています。 【民法102条(代理人の行為能力)】 代理人は、行為能力者であることを要しないと規定されています。これは、代理行為の効果が本人に帰属するため、代理人自身の行為能力(契約などを単独で有効に行える能力)は問われないという趣旨です。したがって、未成年者や被補助人、被保佐人であっても、有効に代理人となることができます。 【民法108条1項(自己契約及び双方代理の禁止)】 同一の法律行為について、代理人が本人と相手方の双方の代理人となること(双方代理)は原則として禁止されています。これは、代理人が双方の利益を公平に扱うことが困難であり、利益相反が生じる可能性があるためです。ただし、本人があらかじめ許諾した場合や、単なる債務の履行行為については許容されます。原則に反する双方代理は無権代理行為となり、本人の追認があれば有効となります。 【民法111条1項2号(代理権の消滅事由)】 代理権は、代理人が死亡したとき、破産手続開始の決定を受けたとき、または後見開始の審判を受けたときに消滅すると定められています。これは、代理人の個人的な信頼関係や能力の喪失が、代理権の存続を不適切にするためです。
【選択肢1】誤り。 代理人が自己の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした場合(これを「代理権の濫用」といいます)でも、原則としてその行為は有効であり、本人に効果が帰属します。しかし、相手方Cが代理人Bの着服の意図を知っていた場合、民法93条ただし書(心裡留保)の規定が類推適用され、本件契約は無効となり、その効果はAに帰属しません。したがって、「本件契約の効果はAに帰属する」という記述は誤りです。相手方が悪意または有過失の場合は、本人に効果が帰属しないと覚えておきましょう。 【選択肢2】誤り。 民法102条は、「代理人は行為能力者であることを要しない」と明確に定めています。これは、代理行為の効果は本人に帰属するため、代理人自身の行為能力は問題とならないという趣旨です。したがって、補助開始の審判を受けている被補助人であっても、有効に代理権を取得し、代理人として行為することができます。よって、「Bは有効に代理権を取得することができない」という記述は誤りです。被補助人だけでなく、未成年者や被保佐人も代理人になれます。 【選択肢3】誤り。 民法108条1項は、代理人が同一の法律行為について当事者双方の代理人となること(双方代理)を原則として禁止しています。これは、代理人が双方の利益を公平に扱うことが困難であるためです。しかし、本人があらかじめ許諾した場合は、双方代理も有効となります。本記述では「Aの許諾の有無にかかわらず、本件契約は無効となる」とありますが、Aが許諾すれば有効となるため、この記述は誤りです。原則に反する双方代理は無権代理行為となり、本人の追認があれば有効となります。 【選択肢4】正しい。 民法111条1項2号は、代理権の消滅事由として「代理人が後見開始の審判を受けたこと」を挙げています。AがBに代理権を授与した後にBが後見開始の審判を受けた場合、その時点でBの代理権は消滅します。代理権が消滅した後にBが本件契約を締結しても、それは代理権のない者が行った行為、すなわち無権代理行為となります。したがって、この記述は正しいです。代理権の消滅事由は、本人の死亡、代理人の死亡・破産・後見開始の審判の4つをしっかり覚えましょう。