宅建 平成26年度(2014年)問3 権利関係 の解説

問題

権利の取得や消滅に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

  1. 売買契約に基づいて土地の引渡しを受け、平穏に、かつ、公然と当該土地の占有を始めた買主は、当該土地が売主の所有物でなくても、売主が無権利者であることにつき善意で無過失であれば、即時に当該不動産の所有権を取得する。
  2. 所有権は、権利を行使することができる時から20年間行使しないときは消滅し、その目的物は国庫に帰属する。
  3. 買主の売主に対する瑕疵担保による損害賠償請求権には消滅時効の規定の適用があり、この消滅時効は、買主が売買の目的物の引渡しを受けた時から進行する。
  4. 20年間、平穏に、かつ、公然と他人が所有する土地を占有した者は、占有取得の原因たる事実のいかんにかかわらず、当該土地の所有権を取得する。

正解

正解は選択肢 3 です。

解説

正解は選択肢3です。契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)に基づく損害賠償請求権は債権であり、民法166条1項の消滅時効の適用を受けます。この消滅時効の起算点については、判例(最判平成13年11月27日)により、買主が目的物の引渡しを受けた時から進行するとされています。

【民法166条1項】債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。 一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。 二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。 (※2020年4月1日施行の改正民法により、債権の消滅時効の原則的な期間が「権利を行使できることを知った時から5年、権利を行使できる時から10年」となりました。本問の判例は旧法下のもので、引渡し時を起算点としていますが、契約不適合責任に基づく損害賠償請求権が債権である以上、消滅時効の適用があるという点は変わりません。) 【民法162条1項】20年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。 【民法162条2項】10年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。 (※取得時効の要件を定めた条文です。特に「所有の意思をもって」という要件が重要です。) 【民法192条】取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。 (※動産の即時取得(善意取得)を定めた条文です。不動産には適用されません。) 【民法167条2項】所有権は、時効によって消滅しない。 (※所有権には消滅時効がないことを明確に定めています。これは非常に重要なポイントです。) 【最判平成13年11月27日】売買契約の目的物に瑕疵があった場合における買主の売主に対する損害賠償請求権の消滅時効は、目的物の引渡しを受けた時から進行する。 (※契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)に基づく損害賠償請求権の消滅時効の起算点に関する重要な判例です。)

【選択肢1】誤り。不動産については、民法192条の即時取得(善意取得)の規定は適用されません。即時取得は、動産にのみ認められる制度であり、不動産の権利変動は登記によって公示されるため、即時取得の必要性がないとされています。したがって、売主が無権利者である場合、買主が善意無過失であっても、即時に不動産の所有権を取得することはありません。不動産取引では、登記の確認が非常に重要になります。 【選択肢2】誤り。所有権は、民法167条2項により、時効によって消滅することはありません。消滅時効の適用があるのは、債権や所有権以外の財産権(例えば、地上権や永小作権など)です。所有権が消滅しない以上、その目的物が国庫に帰属するという記述も誤りです。所有権は非常に強力な権利であり、行使しないからといって失われることはありません。 【選択肢3】正。買主の売主に対する契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)に基づく損害賠償請求権は、債権であるため、民法166条1項の消滅時効の適用があります。そして、この消滅時効の起算点については、判例(最判平成13年11月27日)により、買主が売買の目的物の引渡しを受けた時から進行するとされています。なお、2020年4月1日施行の改正民法により、旧法の「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」と名称が変更され、その内容も一部変更されましたが、損害賠償請求権が債権であり、消滅時効の適用があること、その起算点が引渡し時であるという判例の趣旨は維持されています。また、改正民法では、買主が不適合を知った時から1年以内に売主に通知しないと損害賠償請求などができなくなるという期間制限(民法566条)がありますが、これは消滅時効とは別の制度ですので混同しないように注意しましょう。 【選択肢4】誤り。取得時効が成立するためには、民法162条1項に規定されている「所有の意思をもって」占有するという要件が必要です。これは、自己のためにする占有(自主占有)を意味し、賃借人や受寄者のように他人の所有権を前提とした占有(他主占有)では、いくら長期間占有しても取得時効は成立しません。「占有取得の原因たる事実のいかんにかかわらず」という記述は、この「所有の意思」の要件を無視しているため誤りです。例えば、賃貸借契約に基づいて土地を占有している場合、その占有は「所有の意思」がないため、20年経っても所有権を取得することはありません。

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