宅建 平成21年度(2009年)問10 民法 の解説
問題
Aを売主、Bを買主として甲土地の売買契約を締結した場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
- A所有の甲土地にAが気付かなかった瑕疵があり、その瑕疵については、Bも瑕疵であることに気付いておらず、かつ、気付かなかったことにつき過失がないような場合には、Aは瑕疵担保責任を負う必要はない。
- BがAに解約手付を交付している場合、Aが契約の履行に着手していない場合であっても、Bが自ら履行に着手していれば、Bは手付を放棄して売買契約を解除することができない。
- 甲土地がAの所有地ではなく、他人の所有地であった場合には、AB間の売買契約は無効である。
- A所有の甲土地に抵当権の登記があり、Bが当該土地の抵当権消滅請求をした場合には、Bは当該請求の手続が終わるまで、Aに対して売買代金の支払を拒むことができる。
正解
正解は選択肢 4 です。
解説
正解は選択肢4です。買主が購入した土地に抵当権が設定されており、その抵当権が実行される危険がある場合、民法570条が準用する567条1項の規定により、買主は売主に対して代金の支払いを拒むことができます。これは、買主が抵当権の実行によって所有権を失うリスクから保護するための重要な規定です。
【民法570条(担保責任の規定の準用)】 売買の目的である権利が抵当権又は質権の目的である場合において、買主がこれによってその権利を取得することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合においては、前条の規定を準用する。 【民法567条1項(旧民法。現行民法では570条が準用)】 売買の目的である不動産について抵当権が設定されている場合において、買主がその負担を消滅させるために出捐をしたときは、売主に対し、その償還を請求することができる。この場合において、買主は、売主がその償還をするまで、代金の支払を拒むことができる。 (※現行民法では、570条が567条1項を準用することで、抵当権付き不動産の買主が抵当権消滅請求をした場合に代金支払いを拒めることを規定しています。) 【民法557条1項(手付)】 買主が売主に手付を交付したときは、当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、買主はその手付を放棄して、売主はその倍額を償還して、契約の解除をすることができる。 【民法561条(他人の権利の売買)】 他人の権利を売買の目的としたときは、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う。 【民法562条(追完請求権)】 引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。
【選択肢1】誤。A所有の甲土地にAが気付かなかった瑕疵があり、その瑕疵については、Bも瑕疵であることに気付いておらず、かつ、気付かなかったことにつき過失がないような場合には、Aは瑕疵担保責任を負う必要はない。 →これは誤りです。民法改正により「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」と名称が変わり、売主が引き渡した目的物が契約の内容に適合しない場合(種類、品質、数量に関して不適合がある場合)に負う責任です(民法562条以下)。この責任は、売主の過失の有無にかかわらず発生する「無過失責任」です。売主Aが瑕疵に気付かなかったとしても、またAに過失がなかったとしても、契約内容に適合しない目的物を引き渡した以上、原則として責任を負います。買主Bが瑕疵を知らず、かつ過失がないことは、買主が責任を追及するための要件(善意無過失)ですが、売主の責任の有無には影響しません。したがって、Aは契約不適合責任を負う必要があります。 【選択肢2】正。BがAに解約手付を交付している場合、Aが契約の履行に着手していない場合であっても、Bが自ら履行に着手していれば、Bは手付を放棄して売買契約を解除することができない。 →これは正しい記述です。解約手付による解除(手付解除)は、民法557条1項に定められており、「当事者の一方が契約の履行に着手するまでは」行うことができます。ここでいう「当事者の一方」とは、解除しようとする側だけでなく、相手方も含みます。つまり、解除をしたいBが自ら履行に着手してしまえば、たとえ相手方Aがまだ履行に着手していなくても、Bは手付を放棄して契約を解除することはできなくなります。例えば、Bが土地の測量を開始したり、購入資金の融資実行手続きを完了させたりした場合などが「履行の着手」に該当し得ます。 【選択肢3】誤。甲土地がAの所有地ではなく、他人の所有地であった場合には、AB間の売買契約は無効である。 →これは誤りです。民法561条は「他人の権利の売買」を認めており、他人の所有物を売買の目的とすることは有効です。売主Aは、その権利(所有権)を取得して買主Bに移転する義務を負います。もしAが他人の土地の所有権を取得してBに移転できない場合には、契約不適合責任(旧:他人物売買の売主の担保責任)を負うことになりますが、契約自体が無効になるわけではありません。宅建試験では頻出のポイントですので、他人物売買は「有効」であることをしっかり覚えておきましょう。 【選択肢4】正。A所有の甲土地に抵当権の登記があり、Bが当該土地の抵当権消滅請求をした場合には、Bは当該請求の手続が終わるまで、Aに対して売買代金の支払を拒むことができる。 →これは正しい記述です。買主が購入した不動産に抵当権が設定されており、その抵当権が実行されるおそれがある場合、買主は抵当権の実行によって所有権を失う危険にさらされます。このような場合、民法570条が準用する567条1項(旧民法)の規定により、買主は売主に対して代金の支払いを拒むことができます。これは、買主が抵当権を消滅させるために費用を支出した場合(抵当権消滅請求など)や、抵当権実行の危険がある場合に、その危険がなくなるまで代金の支払いを停止できるという買主保護の規定です。したがって、抵当権消滅請求の手続きが終わるまで、BはAに対して売買代金の支払いを拒むことができます。