宅建 令和6年度(2024年)問5 権利関係 の解説

問題

履行遅滞に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

  1. 不法行為の加害者は、不法行為に基づく損害賠償債務について、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。
  2. 善意の受益者は、その不当利得返還債務について、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。
  3. 請負人の報酬債権に対して、注文者がこれと同時履行の関係にある目的物の瑕疵修補に代わる損害賠償債権を自働債権とする相殺の意思表示をした場合、注文者は、請負人に対する相殺後の報酬残債務について、当該残債務の履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。
  4. 債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来したことを知った後に履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。

正解

正解は選択肢 2 です。

解説

正解は選択肢2です。善意の受益者は、不当利得返還債務について、返還の請求を受けた時から遅滞の責任を負うと民法上定められているため、本選択肢は正しい記述です。

【民法第703条(善意の受益者の返還義務等)】 善意の受益者は、その受けた利益の存する限度において、返還の義務を負う。 (補足説明)不当利得とは、法律上の原因なく他人の財産や労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした場合に、その利益を返還する義務をいいます。善意の受益者とは、自分が不当に利益を得ていることを知らない人のことです。 【民法第412条第3項(履行遅滞の責任の発生時期)】 債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来したことを知った時又は債権者がその期限の到来したことを告げた時のいずれか早い時から遅滞の責任を負う。期限の定めのない債務については、債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。 (補足説明)不当利得返還債務は、原則として期限の定めのない債務と解されます。善意の受益者の場合、不当利得の事実を知らないため、債権者からの請求があって初めて返還義務の履行を求められることになります。このため、期限の定めのない債務に関する規定(履行の請求を受けた時から遅滞責任を負う)が類推適用されます。

【選択肢1】誤。 不法行為による損害賠償債務は、損害発生と同時に遅滞の責任を負います(判例)。これは、不法行為の加害者は、損害が発生した時点から賠償義務を負うべきという考え方に基づくもので、債権者からの履行の請求を待つ必要はありません。したがって、「履行の請求を受けた時から」とする本選択肢は誤りです。 【選択肢2】正。 民法703条によれば、善意の受益者は、その受けた利益の存する限度で返還義務を負います。そして、不当利得返還債務は、原則として期限の定めのない債務と解されるため、民法412条3項後段の規定が類推適用され、債務者は「履行の請求を受けた時」から遅滞の責任を負うことになります。したがって、本選択肢は正しいです。 【選択肢3】誤。 相殺の意思表示がなされると、その効力は相殺適状の時に遡って生じます(民法506条2項)。したがって、相殺後の報酬残債務について遅滞責任を負うかどうかは、相殺適状の時点に遡って判断されることになります。本選択肢のように「当該残債務の履行の請求を受けた時から」遅滞の責任を負うとするのは誤りです。 【選択肢4】誤。 民法412条3項前段によれば、債務の履行について不確定期限がある場合、債務者は「その期限の到来したことを知った時」または「債権者がその期限の到来したことを告げた時」のいずれか早い時から遅滞の責任を負います。「履行の請求を受けた時から」とする本選択肢は誤りです。

令和6年度の過去問を模擬試験形式で解く