宅建 令和1年度(2019年)問14 権利関係 の解説
問題
不動産の登記に関する次の記述のうち、不動産登記法の規定によれば、誤っているものはどれか。
- 登記の申請に係る不動産の所在地が当該申請を受けた登記所の管轄に属しないときは、登記官は、理由を付した決定で、当該申請を却下しなければならない。
- 所有権の登記名義人が相互に異なる土地の合筆の登記は、することができない。
- 登記官は、一筆の土地の一部が別の地目となったときであっても、職権で当該土地の分筆の登記をすることはできない。
- 登記の申請をする者の委任による代理人の権限は、本人の死亡によっては、消滅しない。
正解
正解は選択肢 3 です。
解説
正解は選択肢3です。不動産登記法第38条第1項は、一筆の土地の一部が別の地目となった場合において、表題部所有者または所有権の登記名義人が分筆の登記の申請をしないときは、登記官が職権で当該土地を分筆することができると定めています。したがって、「職権で当該土地の分筆の登記をすることはできない」とする選択肢3は誤りとなります。
【不動産登記法第25条第1号(却下事由)】 登記官は、次に掲げる場合には、理由を付した決定で、登記の申請を却下しなければならない。 一 申請に係る不動産の所在地が当該申請を受けた登記所の管轄に属しないとき。 (解説)登記所の管轄は、不動産の所在地によって定められています。管轄外の登記所への申請は、根本的に無効であるため、登記官は却下しなければなりません。 【不動産登記法第38条第1項(職権による分筆登記)】 一筆の土地の一部が別の地目となり、又は地番区域が異なることとなった場合において、当該土地の表題部所有者又は所有権の登記名義人が分筆の登記の申請をしないときは、登記官は、当該土地を分筆することができる。 (解説)土地の現況と登記記録を一致させるため、所有者等が申請しない場合でも、登記官が職権で分筆できるとされています。これは、登記の正確性を保つための重要な規定です。 【不動産登記法第41条(合筆の登記の制限)】 次に掲げる土地については、合筆の登記をすることができない。 一 合筆しようとする土地の地番区域が異なる場合 二 合筆しようとする土地の地目又は地積が異なる場合 三 合筆しようとする土地の所有権の登記名義人が異なる場合(※条文には直接の記載はないが、解釈上、合筆後の土地の所有権の登記名義人を特定できないため、合筆はできないとされています。不動産登記規則第89条第1項第1号の趣旨からも導かれます。) 四 所有権の登記以外の権利に関する登記がある土地(権利の種類、登記の目的及び登記の受付年月日が同一であるものを除く。) (解説)合筆は複数の土地を一つにする登記ですが、登記記録の整合性や取引の安全を確保するため、様々な制限が設けられています。特に所有権名義人が異なる場合は、合筆後の所有権の帰属が不明確になるため、認められません。 【民法第111条第1項第1号(代理権の消滅事由)】 代理権は、次に掲げる事由によって消滅する。 一 本人の死亡 (解説)任意代理の場合、本人の死亡は代理権の消滅事由となるのが原則です。しかし、登記申請の代理権については、特例があります。 【大審院大正10年12月23日判決(登記申請代理権と本人の死亡)】 登記申請の委任による代理人の権限は、本人の死亡によっては消滅しない。 (解説)登記申請は、本人の死亡によってもその効力に影響を与えない行為であり、また登記手続の安定性・迅速性を図るため、民法の原則の特例として、本人の死亡によっても代理権は消滅しないとされています。これは実務上非常に重要な判例です。
【選択肢1】正。 登記の申請に係る不動産の所在地が当該申請を受けた登記所の管轄に属しないときは、登記官は、理由を付した決定で、当該申請を却下しなければならない。 これは不動産登記法第25条第1号に規定されている却下事由の一つです。登記所にはそれぞれ管轄区域が定められており、その管轄外の不動産に関する登記申請は受け付けることができません。登記官は、このような申請があった場合には、必ず却下しなければならないとされています。これは、登記制度の秩序を維持するために不可欠なルールです。 【選択肢2】正。 所有権の登記名義人が相互に異なる土地の合筆の登記は、することができない。 不動産登記法第41条は合筆の登記の制限を定めていますが、所有権の登記名義人が異なる土地の合筆は、この条文の趣旨から認められません。例えば、Aさんが所有する土地とBさんが所有する土地を合筆した場合、合筆後の土地の所有権が誰に帰属するのか、登記簿上どのように表示するのかという問題が生じ、登記の公示機能や取引の安全を著しく損なうことになります。そのため、所有権の登記名義人が異なる土地の合筆はできないとされています。 【選択肢3】誤。 登記官は、一筆の土地の一部が別の地目となったときであっても、職権で当該土地の分筆の登記をすることはできない。 不動産登記法第38条第1項は、「一筆の土地の一部が別の地目となり、又は地番区域が異なることとなった場合において、当該土地の表題部所有者又は所有権の登記名義人が分筆の登記の申請をしないときは、登記官は、当該土地を分筆することができる。」と明確に規定しています。つまり、土地の現況と登記記録を一致させるため、所有者等が申請を怠った場合でも、登記官が職権で分筆の登記を行うことが可能です。したがって、「職権で分筆の登記をすることはできない」とする本記述は誤りです。 【選択肢4】正。 登記の申請をする者の委任による代理人の権限は、本人の死亡によっては、消滅しない。 民法第111条第1項第1号では、任意代理権は本人の死亡によって消滅すると規定されていますが、登記申請の代理権については、大審院大正10年12月23日判決により、本人の死亡によっては消滅しないという特則が認められています。これは、登記申請行為が本人の死亡によってもその効力に影響を与えない性質のものであること、また、登記手続の安定性や迅速性を確保する必要があることから、民法の原則が修正されたものです。この判例は、宅建試験でも頻出の重要ポイントです。