宅建 平成29年度(2017年)問4 権利関係 の解説

問題

次の記述のうち、平成29年4月1日現在施行されている民法の条文に規定されているものはどれか。

  1. 権利についての協議を行う旨の合意が書面でされたときは、その合意があった時から1年を経過した時までは、時効は完成しない旨
  2. 他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる旨
  3. 売主は、買主に対し、登記、登録その他の売買の目的である権利の移転についての対抗要件を備えさせる義務を負う旨
  4. 賃借人の原状回復義務の対象となる損傷からは、通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年劣化を除く旨

正解

正解は選択肢 2 です。

解説

正解は選択肢2です。これは民法210条に規定されている「囲繞地通行権」に関する条文であり、平成29年4月1日時点でも施行されていました。他の選択肢は、民法改正(債権法改正など)によって新設された規定であるか、条文に明示的に規定されていない内容です。本問は、民法改正前の知識が問われている点に注意が必要です。

民法第210条(公道に至るための他の土地の通行権) 「他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる。」 補足説明:この条文は、いわゆる「袋地(ふくろじ)」と呼ばれる、公道に一切接していない土地の所有者が、公道に出るために周囲の土地(囲繞地:いにょうち)を通行できる権利を定めたものです。土地の有効利用を促し、公共の利益にも資する重要な規定であり、民法制定当初から存在し、平成29年4月1日時点でも有効な条文でした。

【選択肢1】誤。これは、民法改正(2020年4月1日施行)によって新設された民法第151条(協議による時効の完成猶予)の規定です。具体的には、「権利についての協議を行う旨の合意が書面でされたときは、その合意があった時から1年を経過した時までは、時効は完成しない」と定められています。しかし、本問の基準日である平成29年4月1日時点では、このような条文は民法に存在しませんでした。時効の完成猶予・更新に関する規定は改正によって大きく変更されていますので、新旧の区別をしっかり押さえておきましょう。 【選択肢2】正。これは、民法第210条(公道に至るための他の土地の通行権、通称「囲繞地通行権」)に明確に規定されている内容です。この条文は、平成29年4月1日時点でも施行されており、改正民法でも変更されていません。袋地の所有者が公道に出るための権利として、非常に重要な規定であり、土地の利用価値を確保する目的があります。 【選択肢3】誤。売主が買主に対し、売買の目的である権利の移転についての対抗要件を備えさせる義務を負うことは、売主の権利移転義務(民法第560条)の内容として当然に含まれると解釈されます。例えば、不動産の売買であれば、売主は買主への所有権移転登記に協力する義務を負います。しかし、「登記、登録その他の売買の目的である権利の移転についての対抗要件を備えさせる義務を負う」という具体的な文言が、平成29年4月1日時点の民法の条文に明示的に規定されているわけではありません。条文に「規定されているか」が問われているため、この選択肢は誤りとなります。 【選択肢4】誤。これは、民法改正(2020年4月1日施行)によって新設された民法第621条(賃借人の原状回復義務)のただし書きに明記された内容です。具体的には、「通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年劣化」は原状回復義務の対象外とされています。しかし、本問の基準日である平成29年4月1日時点では、原状回復義務の範囲について、判例や国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」によって「通常損耗や経年劣化は賃借人の原状回復義務の対象外」と解釈されていましたが、民法の条文に直接規定されているわけではありませんでした。改正民法でこの解釈が明文化されたものです。

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