宅建 平成28年度(2016年)問8 権利関係 の解説
問題
AがBに甲建物を月額10万円で賃貸し、BがAの承諾を得て甲建物をCに適法に月額15万円で転貸している場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
- Aは、Bの賃料の不払いを理由に甲建物の賃貸借契約を解除するには、Cに対して、賃料支払の催告をして甲建物の賃料を支払う機会を与えなければならない。
- BがAに対して甲建物の賃料を支払期日になっても支払わない場合、AはCに対して、賃料10万円をAに直接支払うよう請求することができる。
- AがBの債務不履行を理由に甲建物の賃貸借契約を解除した場合、CのBに対する賃料の不払いがなくても、AはCに対して、甲建物の明渡しを求めることができる。
- AがBとの間で甲建物の賃貸借契約を合意解除した場合、AはCに対して、Bとの合意解除に基づいて、当然には甲建物の明渡しを求めることができない。
正解
正解は選択肢 1 です。
解説
正解は選択肢1です。原賃貸借契約の解除は、その当事者であるAとBの間で完結するものであり、転借人Cは契約の当事者ではありません。したがって、AがBの賃料不払いを理由に契約を解除する際、Cに対して催告をする必要はないとするのが判例(最判昭和37年3月29日)の立場です。
民法第613条(転貸の効果): 1. 賃借人が適法に賃借物を転貸したときは、転借人は、賃貸人に対し、直接に義務を負う。この場合においては、転借人は、転貸借の条件及び賃貸借の条件その他の事情により、転貸人に対して負う義務の範囲内で、賃貸人に対して義務を負う。 2. 前項の場合において、転借人は、転貸人に対し転貸借の目的物の引渡しを受けた後に生じた転貸人の賃料債務の履行について、転貸人に代わって賃貸人に弁済をすることができる。この場合において、転貸人が賃貸人に賃料を支払わないときは、賃貸人は、転借人に対し、転貸人に代わって賃貸人に賃料を支払うよう請求することができる。ただし、その請求をすることができる額は、転貸借契約に基づく賃料の額を限度とする。 判例(最判昭和37年3月29日):賃貸人が賃借人の債務不履行を理由として賃貸借契約を解除するにあたっては、転借人に対して催告をすることを要しない。 判例(最判昭和37年2月16日):賃貸借契約が賃貸人と賃借人との合意によって解除された場合、転借人に対してその効力を生じない。
【選択肢1】誤。AがBの賃料不払いを理由に甲建物の賃貸借契約(原賃貸借契約)を解除する場合、その解除は原賃貸借契約の当事者であるAとBの間で行われるものです。転借人Cは、原賃貸借契約の当事者ではありません。したがって、AはCに対して賃料支払いの催告をして機会を与える必要はありません。判例(最判昭和37年3月29日)も、賃貸人が賃借人の債務不履行を理由に賃貸借契約を解除するにあたっては、転借人に対して催告をすることを要しない、としています。この記述は、転借人への催告が必要であるとしている点で誤りです。 【選択肢2】正。民法第613条第2項は、賃貸人が転借人に対して、賃借人が賃貸人に支払うべき賃料を直接請求できる旨を定めています。この場合、転借人が賃貸人に支払うべき額は、転貸借契約に基づく賃料の額(本問では15万円)を限度とします。本問では、AがBに請求できる賃料は10万円であり、これはCがBに支払うべき賃料15万円の範囲内であるため、AはCに対して10万円を直接支払うよう請求することができます。この記述は正しいです。 【選択肢3】正。AがBの債務不履行(賃料不払いなど)を理由に甲建物の賃貸借契約を解除した場合、原賃貸借契約は終了します。転貸借契約は原賃貸借契約を基礎としているため、原賃貸借契約が終了すれば、転貸借契約もその基礎を失い、原則として消滅します。これにより、転借人Cは甲建物を占有する正当な権原を失うことになります。したがって、AはCに対して、甲建物の明渡しを求めることができます。CがBに対して賃料を支払っているかどうかは、AがCに明渡しを求めることとは直接関係ありません。この記述は正しいです。 【選択肢4】正。賃貸借契約が賃貸人Aと賃借人Bとの間で「合意解除」された場合、その効果は転借人Cには及びません。これは、合意解除が当事者間の自由な意思に基づくものであり、第三者である転借人の権利を一方的に害することはできないという考え方に基づきます。判例(最判昭和37年2月16日)も、賃貸借契約が賃貸人と賃借人との合意によって解除された場合、転借人に対してその効力を生じない、としています。したがって、CはBとの転貸借契約に基づき、引き続き甲建物を占有する権利をAに対抗できるため、AはCに対して、合意解除を理由に当然には明渡しを求めることはできません。この記述は正しいです。