宅建 平成27年度(2015年)問6 権利関係 の解説
問題
抵当権に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
- 賃借地上の建物が抵当権の目的となっているときは、一定の場合を除き、敷地の賃借権にも抵当権の効力が及ぶ。
- 抵当不動産の被担保債権の主債務者は、抵当権消滅請求をすることはできないが、その債務について連帯保証をした者は、抵当権消滅請求をすることができる。
- 抵当不動産を買い受けた第三者が、抵当権者の請求に応じてその代価を抵当権者に弁済したときは、抵当権はその第三者のために消滅する。
- 土地に抵当権が設定された後に抵当地に建物が築造されたときは、一定の場合を除き、抵当権者は土地とともに建物を競売することができるが、その優先権は土地の代価についてのみ行使することができる。
正解
正解は選択肢 2 です。
解説
正解は選択肢2です。抵当権消滅請求は、抵当不動産の「第三取得者」が抵当権者に対して行う制度であり(民法383条)、被担保債権の主債務者や連帯保証人は、債務を弁済すべき立場にあるため、この請求をすることはできません。
【民法383条(抵当権消滅請求の要件)】抵当不動産の第三取得者は、その代価を弁済し、又は抵当権者の請求に応じてその代価を弁済したときは、抵当権消滅請求をすることができる。 【民法370条(抵当権の効力の及ぶ範囲)】抵当権は、抵当不動産に付加して一体となっている物に及ぶ。ただし、設定行為に別段の定めがある場合及び債務者の行為によって付加されたもので、その付加によって抵当権者の利益を害しない場合は、この限りでない。 【民法378条(代価弁済)】抵当不動産の第三取得者が、抵当権者の請求に応じてその代価を抵当権者に弁済したときは、抵当権はその第三取得者のために消滅する。 【民法389条(抵当地の建物の競売)】土地に抵当権が設定された後にその土地上に建物が築造されたときは、抵当権者は、土地とともにその建物を競売することができる。ただし、その優先権は、土地の代価についてのみ行使することができる。 【判例】賃借地上の建物に設定された抵当権の効力は、敷地の賃借権にも及ぶ(大判大9.11.19、最判昭40.5.4)。
【選択肢1】正。賃借地上の建物が抵当権の目的となっている場合、その建物と敷地の賃借権は一体となって経済的価値を形成しています。そのため、民法370条の「抵当不動産に付加して一体となっている物」という規定の趣旨に基づき、建物の抵当権の効力は、敷地の賃借権にも及ぶとされています(大審院大正9年11月19日判決、最高裁判所昭和40年5月4日判決)。これは、建物の価値を維持し、抵当権者の担保価値を確保するための重要な考え方です。ただし、「一定の場合を除き」という表現は、例えば賃借権が登記されていない場合など、対抗要件の問題が生じる可能性を考慮したものです。 【選択肢2】誤。抵当権消滅請求(民法383条以下)は、抵当不動産の「第三取得者」が、抵当権者に対して一定の金額を支払うことで抵当権を消滅させ、不動産の所有権を確定させるための制度です。ここでいう「第三取得者」とは、抵当権が設定された不動産を、債務者や保証人以外の者が買い受けた場合などの買主を指します。被担保債権の主債務者やその連帯保証人は、債務を弁済する義務がある立場であり、自らの債務を弁済することで抵当権を消滅させるべき者です。したがって、彼らは抵当権消滅請求の主体とはなり得ません。 【選択肢3】正。これは「代価弁済」に関する民法378条の規定です。抵当不動産を買い受けた第三者(第三取得者)が、抵当権者から請求を受けて、その不動産の代価を抵当権者に直接弁済した場合、その弁済によって抵当権は消滅し、第三取得者は抵当権の負担から解放されます。これは、第三取得者が抵当権の実行によって所有権を失うリスクを回避し、不動産の所有権を安定させるための制度です。 【選択肢4】正。土地に抵当権が設定された後に、その土地上に建物が築造された場合、抵当権者は土地とともにその建物を競売にかけることができます(民法389条、一括競売)。これは、土地と建物の所有者が異なる場合に、土地だけを競売しても建物のために土地の利用が制限され、土地の競売価格が著しく低下するのを防ぎ、抵当権者の担保価値を保全するための制度です。しかし、抵当権の効力はあくまで土地にのみ設定されているため、優先弁済権は土地の競売代価についてのみ行使できます。建物の競売代価については、抵当権者は一般債権者として配当を受けることになります。