宅建 平成27年度(2015年)問1 権利関係 の解説

問題

次の記述のうち、民法の条文に規定されているものはどれか。

  1. 債務の不履行に基づく人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権は、権利を行使することができる時から20年間行使しないときは、時効によって消滅する旨、
  2. 事業のために負担した貸金債務を主たる債務とする保証契約は、保証人になろうとする者が、契約締結の日の前1か月以内に作成された公正証書で保証債務を履行する意思を表示していなければ無効となる旨
  3. 併存的債務引受は、債権者と引受人となる者との契約によってすることができる旨
  4. 債務の不履行に関して債権者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の責任及びその額を定める旨

正解

正解は選択肢 4 です。

解説

正解は選択肢4です。これは民法第418条(過失相殺)に明確に規定されている内容そのものであり、条文の文言と完全に一致しています。他の選択肢は、民法の条文に規定されていないか、規定されている内容と異なるため誤りとなります。

民法第418条(過失相殺): 「債務の不履行又はこれによる損害の発生若しくは拡大に関して債権者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の責任及びその額を定める。」 【補足説明】 この条文は「過失相殺」と呼ばれる制度を定めています。これは、債務不履行によって損害が発生した場合に、被害者である債権者側にも何らかの落ち度(過失)があったときに、その過失の程度に応じて、債務者(加害者)が支払うべき損害賠償の責任や金額を裁判所が調整するというものです。公平な損害の分担を図るための重要な規定です。

【選択肢1】誤。 この記述は、人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効に関する内容ですが、民法の条文に「債務の不履行に基づく」場合に「権利を行使することができる時から20年間」と直接的に規定されているわけではありません。 民法第166条第1項は、債権の消滅時効の原則として「権利を行使することができることを知った時から5年間」または「権利を行使することができる時から10年間」と定めています。一方、民法第724条の2は、不法行為に基づく人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権について「権利を行使することができることを知った時から5年間」または「権利を行使することができる時から20年間」と特則を設けています。本選択肢の「20年間」という期間は、この不法行為の特則の期間に該当します。 債務不履行に基づく人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権については、民法第724条の2が類推適用されるという解釈が有力ですが、これはあくまで類推適用であり、民法の条文に「債務の不履行に基づく」と明記された上で「20年間」と規定されているわけではありません。したがって、本選択肢は民法の条文に直接規定されている内容とは言えません。 【試験対策のポイント】 消滅時効は、原則(民法166条1項)、不法行為(民法724条)、生命身体侵害の特則(民法724条の2)と、複数の期間が混在しており、非常に間違いやすいポイントです。特に「知った時から」と「行使できる時から」の起算点の違い、そして「債務不履行」と「不法行為」の区別をしっかり押さえましょう。本問は「債務の不履行に基づく」と限定している点が重要です。 【選択肢2】誤。 この記述は、事業のために負担した貸金債務を主たる債務とする保証契約に関する内容ですが、民法の条文に「無効となる旨」という表現でそのまま規定されているわけではありません。 民法第465条の2第2項は、2020年4月1日施行の民法改正によって新設された規定で、「事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約又は主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約は、その契約の締結の日前一箇月以内に作成された公正証書で保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していなければ、その効力を生じない。」と規定しています。 選択肢の記述は、この条文の内容とほぼ同じですが、条文の文言は「その効力を生じない」であり、「無効となる旨」という表現は条文の趣旨をまとめたもので、条文そのものの表現ではありません。問題は「民法の条文に規定されているものはどれか」と問うているため、条文の正確な文言と一致しない場合は誤りとなります。 【試験対策のポイント】 民法改正で新設された保証に関する規定は、宅建試験で頻出の重要テーマです。特に「公正証書」の要件は、事業用融資の保証において非常に厳格なルールとして導入されました。条文の正確な文言まで意識して学習しましょう。 【選択肢3】誤。 この記述は、併存的債務引受の成立要件に関する内容ですが、民法の条文には債務引受に関する明文の規定は存在しません。債務引受は、学説や判例によって認められてきた制度です。 債務引受には、旧債務者が債務を免れる「免責的債務引受」と、旧債務者も新債務者も共に債務を負う「併存的債務引受」があります。 併存的債務引受は、一般的に以下のいずれかの方法で成立すると解されています。 1. 債権者と引受人となる者との契約 2. 旧債務者と引受人となる者との契約(この場合、債権者の承諾が必要) 選択肢の「債権者と引受人となる者との契約によってすることができる旨」という内容は、併存的債務引受の成立方法の一つとして学説・判例上認められていますが、民法の条文に明記されているわけではありません。 【試験対策のポイント】 債務引受は民法に明文規定がないため、判例・学説の理解が重要です。特に「免責的」と「併存的」の違い、そしてそれぞれの成立要件(誰と誰の契約か、誰の承諾が必要か)を正確に覚えましょう。 【選択肢4】正。 この記述は、民法第418条(過失相殺)に明確に規定されている内容そのものです。 民法第418条は、「債務の不履行又はこれによる損害の発生若しくは拡大に関して債権者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の責任及びその額を定める。」と規定しています。選択肢の記述は、この条文の文言と完全に一致しています。 【試験対策のポイント】 過失相殺は、損害賠償の場面で非常に重要な概念です。条文の文言をそのまま覚えておきましょう。不法行為の場合(民法722条2項)にも準用される点も合わせて確認しておくと良いでしょう。

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