宅建 平成25年度(2013年)問7 権利関係 の解説
問題
次の1から4までの記述のうち、民法の規定及び下記判決文によれば、誤っているものはどれか。 (判決文) 期間の定めのある建物の賃貸借において、賃借人のために保証人が賃貸人との間で保証契約を締結した場合には、反対の趣旨をうかがわせるような特段の事情のない限り、保証人が更新後の賃貸借から生ずる賃借人の債務についても保証の責めを負う趣旨で合意がされたものと解するのが相当であり、保証人は、賃貸人において保証債務の履行を請求することが信義則に反すると認められる場合を除き、更新後の賃貸借から生ずる賃借人の債務についても保証の責めを免れないというべきである。
- 保証人が期間の定めのある建物の賃貸借の賃借人のために保証契約を締結した場合は、賃貸借契約の更新の際に賃貸人から保証意思の確認がなされていなくても、反対の趣旨をうかがわせるような特段の事情がない限り、更新後の賃借人の債務について保証する旨を合意したものと解される。
- 期間の定めのある建物の賃貸借の賃借人のための保証人が更新後の賃借人の債務についても保証の責任を負う趣旨で合意した場合には、賃借人の未払賃料が1年分に及んだとしても、賃貸人が保証債務の履行を請求することが信義則に反すると認められる事情がなければ、保証人は当該金額の支払義務を負う。
- 期間の定めのある建物の賃貸借の賃借人のための保証人が更新後の賃借人の債務についても保証の責任を負う場合、更新後の未払賃料について保証人の責任は及ぶものの、更新後に賃借人が賃借している建物を故意又は過失によって損傷させた場合の損害賠償債務には保証人の責任は及ばない。
- 期間の定めのある建物の賃貸借の賃借人のための保証人が更新後の賃借人の債務についても保証の責任を負う旨の合意をしたものと解される場合であって、賃貸人において保証債務の履行を請求することが信義則に反すると認められるときには、保証人は更新後の賃借人の債務について保証の責任を負わない。
正解
正解は選択肢 3 です。
解説
正解は選択肢3です。本判決文の趣旨は、期間の定めのある建物の賃貸借における保証契約は、特段の事情がない限り、更新後の賃貸借から生じる賃借人の債務全般について保証の責めを負うと解釈されます。民法446条の原則通り、保証債務は主たる債務に付随するすべての債務に及ぶため、賃料債務だけでなく、賃借物の損傷による損害賠償債務も保証の対象となります。したがって、損害賠償債務には保証人の責任が及ばないとする選択肢3は誤りです。
【判例】 * **最判昭和45年4月24日、最判平成9年11月13日**:期間の定めのある建物の賃貸借において、保証人が賃貸人との間で保証契約を締結した場合、反対の趣旨をうかがわせるような特段の事情のない限り、保証人が更新後の賃貸借から生ずる賃借人の債務についても保証の責めを負う趣旨で合意がされたものと解するのが相当である。ただし、賃貸人において保証債務の履行を請求することが信義則に反すると認められる場合を除き、保証人は更新後の賃貸借から生ずる賃借人の債務についても保証の責めを免れない。 * **補足説明**:賃貸借契約は継続的な契約であり、更新は当初の契約と同一性を有すると考えられます。そのため、保証契約も特段の事情がなければ更新後も継続すると解釈されます。ただし、賃貸人が保証人に全く連絡せず、賃借人の債務が不当に膨らんだ後に一括請求するなど、極めて不誠実な対応があった場合には、信義則(民法1条2項)により保証人の責任が制限されることがあります。 【条文】 * **民法第446条(保証債務の範囲)**:保証債務は、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのものを包含する。 * **補足説明**:保証債務は、主たる債務(この場合は賃貸借契約から生じる賃借人の債務)だけでなく、それに付随して発生するあらゆる債務(利息、遅延損害金、違約金、原状回復費用、損害賠償など)に及びます。これは、保証人が主たる債務の履行を担保する目的で契約を結ぶため、その範囲が広く設定されているためです。
【選択肢1】正。 本判決文は、「反対の趣旨をうかがわせるような特段の事情のない限り、保証人が更新後の賃貸借から生ずる賃借人の債務についても保証の責めを負う趣旨で合意がされたものと解するのが相当」であると明確に述べています。したがって、賃貸借契約の更新の際に、賃貸人から保証意思の確認が特に行われなかったとしても、原則として保証契約は更新後の賃貸借にも及ぶと解されます。これは、賃貸借契約が継続的な契約であり、更新は当初の契約と同一性を有すると考えられるためです。 【選択肢2】正。 本判決文は、「賃貸人において保証債務の履行を請求することが信義則に反すると認められる場合を除き、更新後の賃貸借から生ずる賃借人の債務についても保証の責めを免れない」と述べています。賃借人の未払賃料が1年分に及んだとしても、その事実だけで直ちに賃貸人の請求が信義則に反すると認められるわけではありません。信義則に反すると認められるのは、例えば賃貸人が保証人に全く連絡せず、賃借人の債務が不当に膨大になった後に、保証人に一括で請求するといった、極めて不誠実な対応があった場合に限られます。したがって、そのような特段の事情がなければ、保証人は未払賃料の支払義務を負います。 【選択肢3】誤。 本判決文は、保証人が「更新後の賃貸借から生ずる賃借人の債務」について保証の責めを負うと述べています。賃貸借契約から生じる賃借人の債務には、賃料債務だけでなく、賃借物を善良な管理者の注意をもって使用・保管する義務(善管注意義務)や、契約終了時の原状回復義務、そして故意または過失によって賃借物を損傷させた場合の損害賠償債務も含まれます。民法446条も、保証債務は主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのものを包含すると定めています。したがって、更新後に賃借人が建物を故意または過失によって損傷させた場合の損害賠償債務も、原則として保証人の責任が及ぶ範囲に含まれます。選択肢は「及ばない」としているため、誤りです。 【選択肢4】正。 本判決文は、「賃貸人において保証債務の履行を請求することが信義則に反すると認められる場合を除き、更新後の賃貸借から生ずる賃借人の債務についても保証の責めを免れない」と明記しています。これは裏を返せば、賃貸人による保証債務の履行請求が信義則に反すると認められる場合には、保証人は更新後の賃借人の債務について保証の責任を負わない、という意味になります。この記述は判決文の趣旨と完全に合致しています。