宅建 平成23年度(2011年)問35 宅建業法 の解説
問題
宅地建物取引業者A社が、自ら売主として宅地建物取引業者でない買主Bとの間で締結した投資用マンションの売買契約について、Bが宅地建物取引業法第37条の2の規定に基づき、いわゆるクーリング・オフによる契約の解除をする場合における次の記述のうち、誤っているものの組合せはどれか。 ア A社は、契約解除に伴う違約金の定めがある場合、クーリング・オフによる契約の解除が行われたときであっても、違約金の支払を請求することができる。 イ A社は、クーリング・オフによる契約の解除が行われた場合、買受けの申込み又は売買契約の締結に際し受領した手付金その他の金銭の倍額をBに償還しなければならない。 ウ Bは、投資用マンションに関する説明を受ける旨を申し出た上で、喫茶店で買受けの申込みをした場合、その5日後、A社の事務所で売買契約を締結したときであっても、クーリング・オフによる契約の解除をすることができる。
- ア、イ
- ア、ウ
- イ、ウ
- ア、イ、ウ
正解
正解は選択肢 1 です。
解説
正解は選択肢1です。宅地建物取引業法第37条の2(クーリング・オフ)の規定により、クーリング・オフによる契約解除の場合、宅地建物取引業者は買主に対し、違約金や損害賠償を請求することはできません(同条第6項)。また、受領した金銭は「返還」する義務がありますが、「倍額償還」する義務はありません(同条第5項)。したがって、アとイの記述は誤りとなります。
【宅地建物取引業法第37条の2(クーリング・オフ)】 ・**第1項**: 宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地または建物の売買契約において、買主が宅地建物取引業者でない場合、宅建業者の事務所等以外の場所で買受けの申込みをし、または売買契約を締結した場合、買主は書面により申込みの撤回または契約の解除ができます。この解除は、業者からクーリング・オフができる旨と方法について告げられた日から起算して8日以内に行う必要があります。 ・**第2項**: 買主が、当該宅地または建物の買受けの申込みまたはその売買契約の締結をしようとする場所について、自ら指定した場合は、クーリング・オフの規定は適用されません。 ・**第5項**: クーリング・オフによる契約解除があった場合、宅建業者は受領した手付金その他の金銭を遅滞なく買主に返還しなければなりません。 ・**第6項**: クーリング・オフによる契約解除があった場合、宅建業者は、その契約解除に伴う損害賠償または違約金の支払を請求することができません。 【試験対策のポイント】 クーリング・オフ制度は、買主を不意打ち的な契約から保護するための制度であり、買主にとって非常に有利な制度です。この制度に反する特約は、買主に不利なものであれば無効となります(宅建業法第38条)。特に「場所」「期間」「金銭の扱い」については頻出なので、正確に覚えましょう。
【選択肢ア】誤。 宅地建物取引業法第37条の2第6項は、「宅地建物取引業者は、第一項の規定による契約の解除があつた場合においては、その契約の解除に伴う損害賠償又は違約金の支払を請求することができない。」と明確に規定しています。これは、クーリング・オフ制度が買主保護を目的とした強行規定であるためです。買主がクーリング・オフによって契約を解除した場合、売主である宅建業者は、契約書に違約金の定めがあったとしても、その支払いを請求することは一切できません。したがって、「違約金の支払を請求することができる」とする本記述は誤りです。 【選択肢イ】誤。 宅地建物取引業法第37条の2第5項は、「宅地建物取引業者は、第一項の規定による契約の解除があつた場合においては、…受領した手付金その他の金銭を遅滞なく買主に返還しなければならない。」と定めています。クーリング・オフによる契約解除は、契約を「なかったこと(原状回復)」にする効果があります。そのため、売主である宅建業者は、買主から受け取った手付金やその他の金銭を、そのまま買主に「返還」すれば足ります。「倍額を償還」する義務は、売主が手付解除(民法第557条、宅建業法第39条)をする際に、買主から受け取った手付金の倍額を償還して契約を解除する場合に適用されるルールであり、クーリング・オフとは全く異なる制度です。したがって、「倍額をBに償還しなければならない」とする本記述は誤りです。 【選択肢ウ】正。 クーリング・オフは、宅地建物取引業者の「事務所等以外の場所」で買受けの申込みまたは売買契約を締結した場合に適用されます(宅建業法第37条の2第1項)。喫茶店は「事務所等以外の場所」に該当します。ただし、買主が「自ら指定した場所」で申込みや契約をした場合は、クーリング・オフの対象外となります(同条第2項)。 本記述では、「投資用マンションに関する説明を受ける旨を申し出た上で、喫茶店で買受けの申込みをした」とありますが、「説明を受ける旨を申し出た」ことが直ちに「買主が喫茶店を自ら指定した」ことにはなりません。買主が場所を「自ら指定した」と認められるのは、買主が積極的に特定の場所(例:「自宅に来てほしい」「〇〇カフェで会いたい」など)を業者に指示した場合に限られます。単に説明を求めた結果、業者が提案した喫茶店で申込みをしたのであれば、買主が場所を「指定した」とは言えません。 したがって、喫茶店での買受けの申込みはクーリング・オフの対象となります。その後、A社の事務所で売買契約を締結したとしても、申込みが事務所等以外の場所で行われているため、クーリング・オフは可能です。なお、クーリング・オフには、業者からの告知後8日以内という期間制限がありますが、本問ではその期間が経過したとは読み取れないため、期間内であれば解除できると判断します。したがって、本記述は正しいです。