宅建 平成20年度(2008年)問3 民法 の解説
問題
AがBの代理人としてB所有の甲土地について売買契約を締結した場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
- Aが甲土地の売却を代理する権限をBから書面で与えられている場合、A自らが買主となって売買契約を締結したときは、Aは甲土地の所有権を当然に取得する。
- Aが甲土地の売却を代理する権限をBから書面で与えられている場合、AがCの代理人となってBC間の売買契約を締結したときは、Cは甲土地の所有権を当然に取得する。
- Aが無権代理人であってDとの間で売買契約を締結した後に、Bの死亡によりAが単独でBを相続した場合、Dは甲土地の所有権を当然に取得する。
- Aが無権代理人であってEとの間で売買契約を締結した後に、Aの死亡によりBが単独でAを相続した場合、Eは甲土地の所有権を当然に取得する。
正解
正解は選択肢 3 です。
解説
正解は選択肢3です。無権代理人が本人を相続した場合、無権代理人が本人としてその行為の追認を拒絶することは、信義則(民法1条2項)に反し許されないとする判例(最判昭和40年5月27日)の立場から、無権代理行為は有効なものとして扱われます。したがって、相手方Dは甲土地の所有権を当然に取得することになります。
・**民法108条1項(自己契約及び双方代理の禁止)**:代理人は、本人の許諾を得た場合を除き、自己のために代理行為をしたり、当事者双方の代理人となったりすることはできません。これに違反した行為は、原則として無権代理行為として扱われます。 ・**民法113条1項(無権代理)**:代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じません。 ・**民法1条2項(信義誠実の原則)**:権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければなりません。この原則は、法律関係において当事者が互いに相手方の信頼を裏切らないよう誠実に行動すべきことを求めるものです。 ・**最判昭和40年5月27日**:無権代理人が本人を相続した場合、無権代理人が本人として追認を拒絶することは信義則に反し許されない、と判示しました。これにより、無権代理行為は有効となります。 ・**最判昭和37年4月20日**:本人が無権代理人を相続した場合、本人は無権代理行為を追認することも、追認を拒絶することも自由にできる、と判示しました。
【選択肢1】誤。AがBの代理人として甲土地を売却する権限を与えられているにもかかわらず、A自らが買主となって売買契約を締結する行為は「自己契約」にあたります(民法108条1項)。自己契約は、代理人が本人の利益と自己の利益が相反する状況で行為するため、原則として本人の利益を害するおそれがあるため禁止されています。本人の許諾がある場合や、債務の履行など本人の利益を害するおそれがない場合を除き、原則として無権代理行為となり、本人が追認しない限り本人に対して効力を生じません(民法113条1項)。したがって、Aが甲土地の所有権を「当然に取得する」わけではありません。 【選択肢2】誤。AがBの代理人として甲土地を売却する権限を与えられている一方で、Cの代理人となってBC間の売買契約を締結する行為は「双方代理」にあたります(民法108条1項)。双方代理も、代理人が当事者双方の利益を同時に代表するため、一方の利益を優先し、他方の利益を害するおそれがあるため原則として禁止されています。本人の許諾がある場合や、債務の履行など本人の利益を害するおそれがない場合を除き、原則として無権代理行為となり、本人が追認しない限り本人に対して効力を生じません(民法113条1項)。したがって、Cが甲土地の所有権を「当然に取得する」わけではありません。 【選択肢3】正。Aが無権代理人としてDとの間で売買契約を締結した後に、本人Bが死亡し、AがそのBを単独で相続した場合、これは「無権代理人が本人を相続したケース」にあたります。この場合、判例(最判昭和40年5月27日)は、無権代理人が本人としての地位を承継したにもかかわらず、自らが行った無権代理行為の追認を拒絶することは、信義誠実の原則(民法1条2項)に反し許されない、と判断しています。つまり、無権代理行為は有効なものとして扱われるため、Dは甲土地の所有権を当然に取得することになります。これは、無権代理人が自己の行為を否定することは許されないという公平の観点からの結論です。 【選択肢4】誤。Aが無権代理人としてEとの間で売買契約を締結した後に、無権代理人Aが死亡し、本人BがそのAを単独で相続した場合、これは「本人が無権代理人を相続したケース」にあたります。この場合、本人Bは、無権代理人Aの地位を相続しますが、同時に無権代理行為に対する追認権と追認拒絶権も有しています。判例(最判昭和37年4月20日)は、本人が無権代理人を相続したとしても、本人が無権代理行為の追認を拒絶する権利を失うものではない、と判断しています。したがって、Bは無権代理行為を追認することも、追認を拒絶することも自由にできます。Eが甲土地の所有権を「当然に取得する」わけではありません。