宅建 令和6年度(2024年)問2 権利関係 の解説
問題
委任契約・準委任契約に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
- 売主が、売買契約の付随義務として、買主に対して、マンション専有部分内の防火戸の操作方法につき説明義務を負う場合、業務において密接な関係にある売主から委託を受け、売主と一体となって当該マンションの販売に関する一切の事務を行っていた宅地建物取引業者も、買主に対して、防火戸の操作方法について説明する信義則上の義務を負うことがある。
- 受任者は、委任者の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復受任者を選任することができない。
- 委任契約で本人が死亡しても代理権が消滅しない旨を合意して代理人に代理権を与えた場合、本人が死亡しても代理権は消滅しない。
- 委任は、当事者の一方が仕事を完成することを相手方に約し、相手方がその仕事の結果に対しその報酬を支払うことを約さなければ、その効力を生じない。
正解
正解は選択肢 4 です。
解説
正解は選択肢4です。委任契約は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって成立します(民法643条)。仕事を完成させることや、報酬の支払いは、委任契約の成立要件ではありません。
【民法643条(委任)】 委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。 (補足説明)この条文が示す通り、委任契約は「法律行為の委託と承諾」だけで成立します。報酬の約束は必須ではありませんし、仕事の完成も契約の成立要件ではありません。報酬の有無は、有償委任か無償委任かの区別に関わるだけで、契約の成立自体には影響しません。 【民法104条(復代理人の選任)】 代理人は、本人の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復代理人を選任することができない。 (補足説明)委任契約における受任者(代理人)が、さらに別の人(復受任者、復代理人)に仕事を任せる場合に関する規定です。原則として本人の許可が必要ですが、緊急時などやむを得ない事情があれば許可なしでも選任できます。 【民法111条1項(代理権の消滅事由)】 代理権は、次に掲げる事由によって消滅する。 一 本人の死亡。 二 代理人の死亡又は代理人が破産手続開始の決定若しくは後見開始の審判を受けたこと。 (補足説明)代理権は、本人や代理人の死亡など、特定の事由が発生すると原則として消滅します。ただし、この規定は任意規定であり、当事者間の特約で消滅しないとすることも可能です。 【判例(最判平成15年11月14日)】 宅地建物取引業者が売主と一体となって販売活動を行う場合、売主が負う説明義務の一部を宅建業者も信義則上負うことがある。 (補足説明)この判例は、宅建業者が単なる仲介業者ではなく、売主と密接に連携して販売活動を行う場合に、売主と同様に買主に対して説明義務を負うことがある、ということを示しています。これは、取引の安全と買主保護の観点から導かれる信義則(信義誠実の原則)に基づくものです。
【選択肢1】正。 売主が、売買契約の付随義務として買主に対して説明義務を負う場合、業務において密接な関係にある売主から委託を受け、売主と一体となって当該マンションの販売に関する一切の事務を行っていた宅地建物取引業者も、買主に対して、防火戸の操作方法について説明する信義則上の義務を負うことがあります。これは、最判平成15年11月14日の判例の趣旨に合致します。宅建業者が売主と密接に連携して販売活動を行う場合、買主保護の観点から、売主と同様に説明義務を負うことがあるとされています。 【選択肢2】正。 受任者は、委任者の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復受任者を選任することができません(民法104条)。これは、委任契約が当事者間の信頼関係に基づくものであるため、受任者が誰に仕事を任せるかについて本人の意思が尊重されるべきだからです。ただし、緊急時など、やむを得ない事由がある場合には、本人の承諾なしに復受任者を選任することが許されます。 【選択肢3】正。 民法111条1項は、本人の死亡を代理権の消滅事由と定めていますが、この規定は任意規定です。したがって、当事者間の特約によって、本人の死亡後も代理権が存続すると定めることができます。このような特約は有効であり、本人が死亡しても代理権は消滅しません。例えば、死後の事務処理を委任する契約(死後事務委任契約)などがこれに該当します。 【選択肢4】誤。 委任契約は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生じます(民法643条)。仕事を完成させることや、その仕事の結果に対して報酬を支払うことは、委任契約の成立要件ではありません。委任契約は、報酬の有無にかかわらず成立し(無償委任も可能です)、また、仕事の完成を目的とする契約は請負契約(民法632条)であり、委任契約とは異なります。