宅建 令和3年度(2021年)問7 権利関係 の解説
問題
次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。
- Bが甲自動車の引渡しを受けたが、甲自動車のエンジンに契約の内容に適合しない欠陥があることが判明した場合、BはAに対して、甲自動車の修理を請求することができる。
- Bが甲自動車の引渡しを受けたが、甲自動車に契約の内容に適合しない修理不能な損傷があることが判明した場合、BはAに対して、売買代金の減額を請求することができる。
- Bが引渡しを受けた甲自動車が故障を起こしたときは、修理が可能か否かにかかわらず、BはAに対して、修理を請求することなく、本件契約の解除をすることができる。
- 甲自動車について、第三者CがA所有ではなくC所有の自動車であると主張しており、Bが所有権を取得できないおそれがある場合、Aが相当の担保を供したときを除き、BはAに対して、売買代金の支払を拒絶することができる。
正解
正解は選択肢 3 です。
解説
正解は選択肢3です。契約不適合責任において、買主が売買契約を解除するには、原則として、売主に対し相当の期間を定めて追完(修理など)の催告をし、その期間内に追完がない場合に限られます(民法541条)。修理が可能であるにもかかわらず、催告なしに直ちに解除できるとする本選択肢は誤りです。
【民法541条(催告による解除)】 契約の解除の原則的な要件を定めています。債務不履行があった場合、債権者(買主)は相当の期間を定めて履行の催告をし、その期間内に履行がないときは契約を解除できる、というルールです。 【民法542条(催告によらない解除)】 催告なしに直ちに解除できる例外的な場合を定めています。例えば、履行が不能な場合(1項1号)や、債務者が履行を明確に拒絶した場合(1項2号)などがあります。 【民法562条(買主の追完請求権)】 売買の目的物が契約の内容に適合しない(契約不適合)場合、買主が売主に対して、目的物の修補(修理)、代替物の引渡し、または不足分の引渡しによる履行の追完を請求できる権利です。 【民法563条(買主の代金減額請求権)】 契約不適合があった場合、買主が追完請求をしても追完されないときや、追完が不能な場合などに、代金の減額を請求できる権利です。 【民法576条(他人の権利の売買における買主の代金支払拒絶権)】 売買の目的である権利が他人に属する場合において、売主がその権利を取得して買主に移転することができないおそれがあるときに、買主が代金の支払いを拒絶できる権利です。ただし、売主が相当の担保を供した場合は拒絶できません。
【選択肢1】正。 民法562条1項は、引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができると定めています。本選択肢の「甲自動車のエンジンに契約の内容に適合しない欠陥がある」という状況は、まさに「品質に関する契約不適合」に該当します。そして、「甲自動車の修理」は「目的物の修補」に該当するため、買主Bは売主Aに対して修理を請求できます。これは契約不適合責任における買主の重要な権利の一つです。 【選択肢2】正。 民法563条1項は、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができると定めています。さらに同条2項は、追完が不能である場合など、催告をしても追完を受ける見込みがないときは、催告をすることなく直ちに代金減額請求ができると規定しています。本選択肢は「修理不能な損傷」とあるため、追完が不能なケースに該当し、買主Bは売主Aに対して直ちに代金減額を請求できます。追完ができない以上、催告は無意味だからです。 【選択肢3】誤。 契約不適合責任における解除権は、原則として、民法541条に基づき、買主が売主に対し相当の期間を定めて追完の催告をし、その期間内に追完がない場合に初めて行使できます。これは、まず売主に不適合を是正する機会を与えるべきだという考え方に基づいています。本選択肢では「修理が可能か否かにかかわらず、修理を請求することなく」解除できるとしていますが、修理が可能な場合は、まず修理(追完)の催告をする必要があります。催告なしに直ちに解除できるのは、民法542条に規定される履行不能の場合や、売主が追完を明確に拒絶した場合など、例外的な場合に限られます。したがって、本選択肢は誤りです。 【選択肢4】正。 民法576条は、売買の目的である権利が他人に属する場合において、売主がその権利を取得して買主に移転することができないおそれがあるときは、買主は、その危険の限度において、代金の支払を拒絶することができると定めています。ただし、売主が相当の担保を供したときは、この限りではありません。本選択肢は、第三者Cが所有権を主張しており、買主Bが所有権を取得できないおそれがある状況です。このような場合、買主Bは代金の支払いを拒絶できますが、売主Aが「相当の担保を供した」場合は、買主Bは拒絶できません。これは、買主が代金を支払っても目的物を得られないという不利益を避けるための「危険の抗弁権」と呼ばれる権利です。本選択肢は、この民法576条の規定通りの内容であり、正しい記述です。