宅建 平成29年度(2017年)問7 権利関係 の解説

問題

請負契約に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

  1. 請負契約が請負人の責めに帰すべき事由によって中途で終了し、請負人が施工済みの部分に相当する報酬に限ってその支払を請求することができる場合、注文者が請負人に請求できるのは、注文者が残工事の施工に要した費用のうち、請負人の未施工部分に相当する請負代金額を超える額に限られる。
  2. 請負契約が注文者の責めに帰すべき事由によって中途で終了した場合、請負人は、残債務を免れるとともに、注文者に請負代金全額を請求できるが、自己の債務を免れたことによる利益を注文者に償還しなければならない。
  3. 請負契約の目的物に瑕疵がある場合、注文者は、請負人から瑕疵の修補に代わる損害の賠償を受けていなくとも、特別の事情がない限り、報酬全額を支払わなければならない。
  4. 請負人が瑕疵担保責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実については、その責任を免れることはできない。

正解

正解は選択肢 3 です。

解説

正解は選択肢3です。請負契約の目的物に瑕疵(契約不適合)がある場合、注文者は、瑕疵の修補や損害賠償がなされるまでは、報酬の支払いを拒むことができます(民法533条の同時履行の抗弁権)。したがって、特別の事情がない限り報酬全額を支払わなければならない、という記述は誤りです。

【民法533条(同時履行の抗弁権)】 双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。 (解説)請負契約は、請負人が仕事を完成させる債務と、注文者が報酬を支払う債務が対価関係にある双務契約です。仕事に瑕疵がある場合、請負人の仕事完成債務が完全に履行されたとは言えないため、注文者は報酬の支払いを拒むことができます。 【民法562条(追完請求権)及び559条(有償契約への準用)】 引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。 (解説)請負契約においても、目的物に契約不適合(瑕疵)がある場合、注文者は請負人に対し、修補などの追完を請求できます。この追完請求権と報酬支払債務は同時履行の関係に立つと解されています。 【民法640条(請負人の担保責任の免除に関する特約)】 請負人が瑕疵担保責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実については、その責任を免れることはできない。 (解説)請負人が悪意の場合には、免責特約があっても責任を免れないという、請負人の誠実義務を求める規定です。これは売買契約の572条と同様の趣旨です。

【選択肢1】正。 請負人の責めに帰すべき事由(請負人の落ち度)によって契約が中途で終了した場合、注文者は、請負人の債務不履行を理由に契約を解除し、損害賠償を請求することができます(民法415条)。この損害賠償の範囲は、契約が履行されていれば得られたであろう利益(履行利益)を填補するものです。具体的には、残工事の完成に要する費用が、当初の請負代金のうち未施工部分に相当する額を超える場合、その超過額は注文者が請負人の債務不履行によって被った損害として、請負人に請求することができます(最判昭和50年5月29日)。これは、請負人が契約通りに仕事をしていれば注文者が負担しなかったはずの追加費用だからです。 【選択肢2】正。 請負契約が注文者の責めに帰すべき事由(注文者の落ち度)によって中途で終了した場合、請負人は、残工事を施工する債務を免れることになります。しかし、請負人は、契約が履行されていれば得られたであろう請負代金全額を損害として注文者に請求することができます(民法415条)。ただし、請負人は残工事を施工しなくて済んだことで、材料費や人件費などの費用を支出せずに済んでいます。この「自己の債務を免れたことによる利益」(費用節約分)は、注文者に償還(請負代金から控除)しなければなりません(民法545条3項、423条の2類推適用、最判昭和36年12月15日)。これは、損害賠償によって請負人が不当に利得することを防ぐための調整です。 【選択肢3】誤。 請負契約の目的物に瑕疵(契約不適合)がある場合、注文者は、請負人に対して瑕疵の修補請求や損害賠償請求をすることができます(民法562条、559条)。そして、これらの請求がなされるまでは、注文者は、請負人からの報酬支払請求に対して、同時履行の抗弁権を行使して報酬の支払いを拒むことができます(民法533条、最判昭和36年12月15日)。つまり、請負人が完全な仕事を提供しない限り、注文者は報酬全額を支払う義務はありません。したがって、「特別の事情がない限り、報酬全額を支払わなければならない」という記述は誤りです。 【選択肢4】正。 請負人が瑕疵担保責任(契約不適合責任)を負わない旨の特約をすることは原則として有効です。しかし、民法640条(売買契約の572条と同様)は、請負人がその瑕疵の存在を知りながら、それを注文者に告げなかった事実については、免責特約があっても責任を免れることはできないと定めています。これは、請負人の悪意による不誠実な行為を保護しないという趣旨であり、消費者保護の観点からも重要な規定です。悪意の請負人まで免責してしまうと、契約の信頼性が損なわれるためです。

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