宅建 平成29年度(2017年)問1 権利関係 の解説
問題
代理に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
- 売買契約を締結する権限を与えられた代理人は、特段の事情がない限り、相手方からその売買契約を取り消す旨の意思表示を受領する権限を有する。
- 委任による代理人は、本人の許諾を得たときのほか、やむを得ない事由があるときにも、復代理人を選任することができる。
- 復代理人が委任事務を処理するに当たり金銭を受領し、これを代理人に引き渡したときは、特段の事情がない限り、代理人に対する受領物引渡義務は消滅するが、本人に対する受領物引渡義務は消滅しない。
- 夫婦の一方は、個別に代理権の授権がなくとも、日常家事に関する事項について、他の一方を代理して法律行為をすることができる。
正解
正解は選択肢 3 です。
解説
正解は選択肢3です。復代理人が本人に代わって金銭を受領し、それを代理人に引き渡した場合、復代理人の本人に対する受領物引渡義務は消滅します。なぜなら、その金銭は代理人を通じて最終的に本人に引き渡されるべきものであり、復代理人が代理人に引き渡した時点で、復代理人としての直接の義務は果たされたと解されるからです(最判昭43.1.26)。選択肢の「本人に対する受領物引渡義務は消滅しない」という点が誤りとなります。
・民法第104条(任意代理人の復任権):委任による代理人(任意代理人)が復代理人を選任できる条件を定めています。本人の許諾があるか、やむを得ない事由がある場合に限られます。 ・民法第761条(日常家事に関する代理権):夫婦の一方が日常家事に関して行った法律行為について、他の一方も連帯責任を負うことを規定しており、ここから日常家事代理権が認められます。 ・大審院判例大正9年5月28日:契約締結の代理権の範囲について、その契約の解除や取り消しに関する意思表示を受領する権限も含まれると判断しました。 ・最高裁判例昭和43年1月26日:復代理人が受領した金銭を代理人に引き渡した場合、復代理人の本人に対する引渡義務が消滅すると判断しました。
【選択肢1】正。売買契約を締結する権限を与えられた代理人は、特段の事情がない限り、相手方からその売買契約を取り消す旨の意思表示を受領する権限を有します。 これは民法に明文の規定はありませんが、判例(大判大9.5.28)が認めている考え方です。契約を締結する権限には、その契約を終了させる行為(解除や取消し)に関する意思表示を受領する権限も含まれると解されています。代理権の範囲を考える上で重要な判例ですので、しっかり押さえておきましょう。 【選択肢2】正。委任による代理人(任意代理人)は、本人の許諾を得たときのほか、やむを得ない事由があるときにも、復代理人を選任することができます。 これは民法第104条に規定されている通りです。任意代理は本人との信頼関係に基づいて成立するため、原則として代理人自身が事務を処理すべきですが、例外的に本人の許諾がある場合や、病気などで代理人自身が事務を処理できない「やむを得ない事由」がある場合には、復代理人を選任することが認められています。法定代理人(親権者など)の場合は、原則としていつでも復代理人を選任できますが、任意代理人とは条件が異なる点に注意が必要です。 【選択肢3】誤。復代理人が委任事務を処理するに当たり金銭を受領し、これを代理人に引き渡したときは、特段の事情がない限り、代理人に対する受領物引渡義務は消滅するだけでなく、本人に対する受領物引渡義務も消滅します。 復代理人は、その権限の範囲内で本人を代理します。したがって、復代理人が本人に代わって金銭を受領した場合、その金銭は最終的に本人に帰属すべきものです。復代理人が受領した金銭を代理人に引き渡せば、復代理人としての本人に対する直接の引渡義務は消滅し、今度は代理人が本人に対してその金銭を引き渡す義務を負うことになります(最判昭43.1.26)。選択肢の「本人に対する受領物引渡義務は消滅しない」という記述は、復代理人に二重の引渡義務を負わせる不合理な解釈であり、誤りです。 【選択肢4】正。夫婦の一方は、個別に代理権の授権がなくとも、日常家事に関する事項について、他の一方を代理して法律行為をすることができます。 これは民法第761条に規定されている「日常家事代理権」と呼ばれるものです。夫婦は共同生活を営む上で、食料品の購入や光熱費の支払いなど、日常の家事に関する事項について互いに代理権を有すると解されています。これは法定代理権の一種であり、個別の委任契約がなくても当然に認められるものです。ただし、その範囲は「日常家事」に限られ、高額な不動産の売買などには及びません。また、この代理権を濫用した場合には、権利濫用や表見代理の規定が適用されることもあります。