宅建 平成28年度(2016年)問6 権利関係 の解説
問題
Aを売主、Bを買主とする甲土地の売買契約(以下この問において「本件契約」という。)が締結された場合の売主の担保責任に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
- Bが、甲土地がCの所有物であることを知りながら本件契約を締結した場合、Aが甲土地の所有権を取得してBに移転することができないときは、BはAに対して、損害賠償を請求することができない。
- Bが、甲土地がCの所有物であることを知りながら本件契約を締結した場合、Aが甲土地の所有権を取得してBに移転することができないときは、Bは、本件契約を解除することができる。
- Bが、A所有の甲土地が抵当権の目的となっていることを知りながら本件契約を締結した場合、当該抵当権の実行によってBが甲土地の所有権を失い損害を受けたとしても、BはAに対して、損害賠償を請求することができない。
- Bが、A所有の甲土地が抵当権の目的となっていることを知りながら本件契約を締結した場合、当該抵当権の実行によってBが甲土地の所有権を失ったときは、Bは、本件契約を解除することができる。
正解
正解は選択肢 3 です。
解説
正解は選択肢3です。民法567条は、売買の目的物である不動産に設定された抵当権が実行され、買主が所有権を失った場合の売主の担保責任について定めています。この条文では、買主の善意・悪意を問わず、契約の解除と損害賠償請求が認められるため、悪意の買主でも損害賠償請求ができないとする選択肢3は誤りとなります。
・**民法561条(他人の権利の売買における売主の担保責任)** 「他人の権利を売買の目的とした場合において、売主がその権利を取得して買主に移転することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、買主は、損害賠償の請求をすることができない。ただし、買主がその権利が他人に属することを知らなかったときは、損害賠償の請求をすることができる。」 *補足説明:* 他人物売買では、売主が権利を取得して買主に移転できない場合、買主は契約を解除できます。しかし、損害賠償請求ができるのは、買主がその権利が他人のものであることを知らなかった場合(善意の買主)に限られます。悪意の買主は損害賠償請求できません。 ・**民法567条(抵当権等によって権利を失った買主の権利)** 「売買の目的である不動産について抵当権、質権又は先取特権を行使したことにより買主がその所有権を失ったときは、買主は、契約の解除をすることができる。」(1項) 「前項の場合において、買主は、損害を受けたときは、売主に対し、その賠償を請求することができる。」(2項) *補足説明:* 売買の目的物である不動産に設定された抵当権などが実行され、買主がその所有権を失った場合、買主は契約の解除も、損害賠償請求もできます。この権利は、買主が抵当権の存在を知っていたか否か(善意か悪意か)を問いません。これは、抵当権の実行は買主の意思では防ぎようがないため、買主を厚く保護する趣旨です。
【選択肢1】正。 本件は、売主Aが所有していない甲土地(Cの所有物)を売買する「他人物売買」に関する記述です。民法561条は、他人の権利の売買において、売主がその権利を取得して買主に移転できない場合、買主は契約の解除ができると定めています。しかし、損害賠償請求については、買主がその権利が他人に属することを知らなかったとき(善意の買主)に限って認められます。本選択肢では、買主Bは甲土地がCの所有物であることを「知りながら」(悪意で)契約を締結しているため、損害賠償を請求することはできません。したがって、記述は正しいです。 【選択肢2】正。 これも他人物売買に関する記述です。民法561条によれば、他人の権利の売買において、売主がその権利を取得して買主に移転できない場合、買主は契約の解除をすることができます。この解除権は、買主がその権利が他人に属することを知っていたか否か(善意か悪意か)を問いません。つまり、買主Bが悪意であっても、売主Aが所有権を取得して移転できないときは、契約を解除することができます。したがって、記述は正しいです。 【選択肢3】誤。 本件は、売買の目的物である甲土地に抵当権が設定されており、その抵当権が実行された場合の売主の担保責任に関する記述です。民法567条1項は、抵当権の実行によって買主が所有権を失った場合、買主は契約の解除ができると定めています。さらに、同条2項は、買主が損害を受けたときは、売主に対してその賠償を請求できると定めています。この民法567条は、買主が抵当権の存在を知っていたか否か(善意か悪意か)を問いません。つまり、買主Bが悪意であっても、抵当権の実行によって所有権を失い損害を受けた場合は、売主Aに対して損害賠償を請求することができます。したがって、「損害賠償を請求することができない」とする本記述は誤りです。 【選択肢4】正。 これも抵当権付き不動産売買に関する記述です。民法567条1項は、売買の目的である不動産について抵当権が実行され、買主がその所有権を失った場合、買主は契約の解除をすることができると定めています。この解除権は、買主が抵当権の存在を知っていたか否か(善意か悪意か)を問いません。したがって、買主Bが悪意であっても、抵当権の実行によって所有権を失ったときは、契約を解除することができるため、記述は正しいです。