宅建 平成26年度(2014年)問4 権利関係 の解説

問題

AがBとの間で、CのBに対する債務を担保するためにA所有の甲土地に抵当権を設定する場合と根抵当権を設定する場合における次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。

  1. 抵当権を設定する場合には、被担保債権を特定しなければならないが、根抵当権を設定する場合には、BC間のあらゆる範囲の不特定の債権を極度額の限度で被担保債権とすることができる。
  2. 抵当権を設定した旨を第三者に対抗する場合には登記が必要であるが、根抵当権を設定した旨を第三者に対抗する場合には、登記に加えて、債務者Cの異議を留めない承諾が必要である。
  3. Bが抵当権を実行する場合には、AはまずCに催告するように請求することができるが、Bが根抵当権を実行する場合には、AはまずCに催告するように請求することはできない。
  4. 抵当権の場合には、BはCに対する他の債権者の利益のために抵当権の順位を譲渡することができるが、元本の確定前の根抵当権の場合には、Bは根抵当権の順位を譲渡することができない。

正解

正解は選択肢 4 です。

解説

正解は選択肢4。抵当権の順位譲渡は民法376条1項により認められる一方、根抵当権は元本確定前においては被担保債権が特定されていないため、民法398条の12第1項ただし書により順位譲渡ができないとされています。この選択肢は、それぞれの制度の特性を正確に捉えています。

・**民法第376条第1項(抵当権の順位の譲渡又は放棄)**: 抵当権者は、他の債権者の利益のために、その抵当権の順位を譲渡し、又は放棄することができる。 (補足説明)抵当権は特定の債権を担保するため、その順位を他の債権者に譲ったり放棄したりすることで、後順位の抵当権者や一般債権者の回収を助けることが可能です。 ・**民法第398条の12第1項(根抵当権の順位の譲渡等)**: 第376条の規定は、元本の確定後においては、根抵当権について準用する。ただし、元本の確定前にあっては、この限りでない。 (補足説明)根抵当権は、元本が確定するまでは被担保債権が変動し、特定の債権が定まっていません。そのため、元本確定前に順位を譲渡することは、どの債権の順位を譲渡するのかが不明確になるため、認められていません。元本確定後は、特定の債権を担保する通常の抵当権と同様の性質を持つため、順位譲渡が可能になります。

【選択肢1】誤。 抵当権は、特定の債権(被担保債権)を担保する権利であり、その債権を特定しなければなりません。これは正しい記述です。しかし、根抵当権は「一定の範囲に属する不特定の債権」を極度額の限度で担保するものであり(民法398条の2第1項)、選択肢にある「BC間のあらゆる範囲の不特定の債権」という表現は不適切です。「あらゆる範囲」では、被担保債権の範囲が広範に過ぎ、根抵当権の趣旨である「一定の取引関係から生じる債権」という限定が失われてしまいます。例えば、「銀行取引によって生じる債権」のように、債権発生の原因となる取引の種類を特定する必要があります。したがって、根抵当権に関する記述が不正確であるため、本選択肢は誤りです。 【選択肢2】誤。 抵当権を設定した旨を第三者に対抗するためには、登記が必要であるという点は正しいです(民法177条)。これは根抵当権についても同様で、根抵当権の設定も登記をしなければ第三者に対抗できません(民法398条の2第1項)。しかし、根抵当権を設定した旨を第三者に対抗する場合に、「登記に加えて、債務者Cの異議を留めない承諾が必要である」という記述は誤りです。債務者の承諾は、根抵当権設定契約の成立要件や対抗要件とはされていません。対抗要件はあくまで登記であり、債務者の承諾は不要です。したがって、本選択肢は誤りです。 【選択肢3】誤。 AはCの債務を担保するために自己の土地を提供しているため、物上保証人にあたります。物上保証人は、債務者Cが債務を履行しない場合に、その担保物(甲土地)によって債務を弁済する責任を負いますが、保証人のように「まず債務者Cに催告するように請求する(催告の抗弁権)」権利は認められていません。催告の抗弁権(民法452条)や検索の抗弁権(民法453条)は、人的担保である保証人に認められる権利であり、物的担保である物上保証人には適用されません。したがって、抵当権、根抵当権いずれの場合においても、AはBに対して催告の請求をすることはできません。選択肢は「抵当権を実行する場合には、AはまずCに催告するように請求することができる」としている点で誤りです。 【選択肢4】正。 抵当権の場合、抵当権者は、他の債権者の利益のために、その抵当権の順位を譲渡し、又は放棄することができます(民法376条1項)。これは、特定の債権を担保する抵当権の特性から認められるものです。一方、根抵当権の場合、元本が確定する前は、被担保債権が変動する不特定の債権であるため、どの債権の順位を譲渡するのかが明確ではありません。そのため、民法398条の12第1項ただし書により、元本の確定前の根抵当権については、順位の譲渡や放棄はできないとされています。元本が確定すれば、その時点での特定の債権を担保する通常の抵当権と同様の性質を持つため、順位譲渡が可能となります(民法398条の12第1項本文)。本選択肢は、抵当権と元本確定前の根抵当権における順位譲渡の可否について、民法の規定通りに記述しており、正しいです。

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