宅建 令和3年度(2021年)問5 権利関係 の解説
問題
次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
- 19歳の者は未成年であるので、携帯電話サービスの契約や不動産の賃貸借契約を1人で締結することはできない。
- 養育費は、子供が未成熟であって経済的に自立することを期待することができない期間を対象として支払われるものであるから、子供が成年に達したときは、当然に養育費の支払義務が終了する。
- 営業を許された未成年者が、その営業に関するか否かにかかわらず、第三者から法定代理人の同意なく負担付贈与を受けた場合には、法定代理人は当該行為を取り消すことができない。
- 意思能力を有しないときに行った不動産の売買契約は、後見開始の審判を受けているか否かにかかわらず効力を有しない。
正解
正解は選択肢 4 です。
解説
正解は選択肢4です。民法第3条の2により、法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかった場合、その法律行為は無効となります。これは、行為者が自己の行為の結果を判断できない状態であったため、その意思表示に法的効力を与えるべきではないという考えに基づくもので、後見開始の審判を受けているか否かは関係ありません。
・民法第3条の2(意思能力):法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は無効とする。 【補足】意思能力とは、自己の行為の結果を判断できる精神能力のことです。例えば、幼児や泥酔者、重度の精神障害者などがこれに該当しうる場合があり、この条文は意思能力を欠く者の保護を目的としています。 ・民法第4条(成年年齢):年齢十八歳をもって、成年とする。 【補足】2022年4月1日から成年年齢が20歳から18歳に引き下げられました。 ・民法第5条(未成年者の法律行為):未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる行為については、この限りでない。 【補足】未成年者は判断能力が不十分な場合があるため、保護者(法定代理人)の同意を必要とします。同意がない行為は取り消すことができます。 ・民法第6条(未成年者の営業の許可):一種の営業を許された未成年者は、その営業に関しては、成年者と同一の行為能力を有する。 【補足】特定の営業を許された未成年者は、その営業に関する限り、成年者と同様に契約などを締結できるとされ、これは未成年者の社会活動を促進するための規定です。
【選択肢1】誤。2022年4月1日から民法が改正され、成年年齢は18歳に引き下げられました(民法第4条)。したがって、19歳の者は「成年者」であり、原則として単独で有効な法律行為を行うことができます。携帯電話サービスの契約や不動産の賃貸借契約は、成年者が単独で締結できる法律行為であるため、19歳の者がこれらの契約を1人で締結することは可能です。未成年者であれば法定代理人の同意が必要ですが(民法第5条)、19歳は成年者なのでこの規定は適用されません。 【選択肢2】誤。養育費の支払義務は、子供が「未成熟であって経済的に自立することを期待することができない期間」を対象とするという点は正しいです。しかし、「子供が成年に達したときは、当然に養育費の支払義務が終了する」という部分は誤りです。判例(最高裁平成10年7月10日判決など)は、成年年齢に達した後であっても、大学等に進学して就労していない場合など、経済的に自立していないと認められる場合には、養育費の支払義務が継続すると判断しています。成年年齢の引き下げ(18歳)後もこの考え方は基本的に変わらず、例えば18歳で高校を卒業し、大学に進学した場合は、経済的に自立していないとみなされ、養育費の支払義務が継続することが一般的です。したがって、成年到達が直ちに養育費支払義務の終了を意味するわけではありません。 【選択肢3】誤。「営業を許された未成年者」は、その「営業に関する行為」については、成年者と同一の行為能力を有します(民法第6条第1項)。しかし、この規定は「その営業に関する行為」に限定されます。本選択肢のケースは「その営業に関するか否かにかかわらず」とあり、さらに「負担付贈与」という、営業とは直接関係のない私的な法律行為である可能性が高いです。営業に関しない行為については、未成年者である以上、原則として法定代理人の同意が必要となります(民法第5条第1項)。負担付贈与は、単に権利を得る行為(無償贈与)とは異なり、負担という義務を負う行為であるため、「単に権利を得、又は義務を免れる行為」には該当しません(民法第5条第1項ただし書きの適用なし)。したがって、法定代理人の同意なく行われた営業に関しない負担付贈与は、法定代理人が取り消すことができます(民法第5条第2項)。 【選択肢4】正。民法第3条の2は、「法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は無効とする」と明確に規定しています。「意思能力」とは、自己の行為の結果を判断できる精神能力を指し、例えば泥酔状態や重度の精神障害により、契約の内容を理解できない状態をいいます。意思能力を欠く状態で行われた法律行為は、その意思表示が有効なものとして認められないため、当然に「無効」となります。後見開始の審判を受けているかどうかは、行為能力の有無に関わる問題であり、意思能力の有無とは別の概念です。後見開始の審判を受けていない者であっても、一時的に意思能力を欠く状態(例えば、泥酔状態)で契約を結んだ場合は、その契約は無効となります。したがって、後見開始の審判の有無にかかわらず、意思能力を欠く状態で行われた契約は無効であるという記述は正しいです。