宅建 令和2年度(2020年)問35 宅建業法 の解説

問題

次の記述のうち、宅地建物取引業法の規定によれば、正しいものはどれか。

  1. Aから建設工事を請け負った建設業者は、Aに対する請負代金債権について、営業継続中のAが供託している営業保証金から弁済を受ける権利を有する。
  2. Aが甲県内に新たに支店を設置したときは、本店の最寄りの供託所に政令で定める額の営業保証金を供託すれば、当該支店での事業を開始することができる。
  3. Aは、営業保証金の還付により、営業保証金の額が政令で定める額に不足することとなったときは、甲県知事から不足額を供託すべき旨の通知書の送付を受けた日から2週間以内にその不足額を供託しなければならない。
  4. Aが甲県内に本店及び2つの支店を設置して宅地建物取引業を営もうとする場合、供託すべき営業保証金の合計額は1,200万円である。

正解

正解は選択肢 3 です。

解説

正解は選択肢3です。営業保証金が還付により不足した場合、宅地建物取引業者は、免許権者からの通知を受けた日から2週間以内にその不足額を供託しなければなりません(宅地建物取引業法第29条第2項)。この規定は、営業保証金の維持を義務付けることで、取引の相手方の保護を確実にするための重要なルールです。

【宅地建物取引業法第25条第2項(営業保証金の供託)】 宅地建物取引業者は、前項の営業保証金を主たる事務所の最寄りの供託所に供託しなければならない。 【宅地建物取引業法第27条(還付)】 宅地建物取引業と取引をした者は、その取引により生じた債権に関し、当該宅地建物取引業者が供託した営業保証金について、その債権の弁済を受ける権利を有する。 【宅地建物取引業法第29条第2項(営業保証金の不足額の供託)】 前項の通知を受けた宅地建物取引業者は、その通知を受けた日から二週間以内に、その不足額を供託しなければならない。 【宅地建物取引業法施行令第2条(営業保証金の額)】 法第25条第2項の政令で定める額は、主たる事務所については1,000万円、その他の事務所については1か所につき500万円とする。 【補足説明】 これらの条文は、宅地建物取引業者が取引の相手方に損害を与えた場合に備え、一定額の保証金を供託することを義務付け、その保証金から被害者が弁済を受けられるようにする制度(営業保証金制度)の根幹をなすものです。特に、供託額、供託場所、還付の対象、そして不足額が生じた場合の補充義務は、試験で頻出の重要ポイントです。

【選択肢1】誤。 営業保証金から弁済を受けることができるのは、「宅地建物取引業と取引をした者」が「その取引により生じた債権」について、と宅地建物取引業法第27条に明確に定められています。建設工事の請負代金債権は、通常、宅地建物取引業者が宅地建物取引業として行う取引(例えば、宅地の売買や賃貸の媒介など)から生じる債権ではありません。建設業者が宅地建物取引業者Aから建設工事を請け負った場合、これは建設業法に基づく請負契約であり、宅地建物取引業法上の取引とはみなされません。したがって、建設業者はAの営業保証金から請負代金債権の弁済を受ける権利は有しません。この点は、営業保証金制度の目的と範囲を理解する上で非常に重要です。 【選択肢2】誤。 宅地建物取引業法第25条第2項によれば、営業保証金は「主たる事務所の最寄りの供託所に供託しなければならない」と規定されています。これは、支店を新たに設置した場合でも変わりません。支店を設置するたびに、その支店の最寄りの供託所に供託するわけではなく、あくまで本店(主たる事務所)の所在地を管轄する供託所に、本店分と全支店分の合計額を一括して供託します。支店を設置した場合は、その支店分の営業保証金を追加で供託する必要がありますが、供託場所は本店の最寄りの供託所のままです。 【選択肢3】正。 宅地建物取引業法第29条第2項に規定されている通り、営業保証金の還付(被害者への弁済)により、営業保証金の額が政令で定める額(本店1,000万円、支店1か所につき500万円)に不足することとなった場合、免許権者(この場合は甲県知事)は、当該宅地建物取引業者に対し、不足額を供託すべき旨を通知します。この通知を受けた宅地建物取引業者は、その通知を受けた日から「2週間以内」にその不足額を供託しなければなりません。この期間は厳守すべき重要な期限であり、怠ると業務停止処分などの対象となる可能性があります。この選択肢の記述は、この条文の内容と完全に合致しています。 【選択肢4】誤。 宅地建物取引業法第25条第2項および宅地建物取引業法施行令第2条により、営業保証金の額は、主たる事務所(本店)が1,000万円、その他の事務所(支店)が1か所につき500万円と定められています。したがって、Aが甲県内に本店1つと支店2つを設置して宅地建物取引業を営む場合、供託すべき営業保証金の合計額は以下のようになります。 本店分:1,000万円 支店分:500万円 × 2か所 = 1,000万円 合計額:1,000万円 + 1,000万円 = 2,000万円 選択肢の「1,200万円」という記述は誤りです。この計算は、営業保証金制度の基本中の基本であり、確実に押さえておく必要があります。

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