宅建 平成30年度(2018年)問10 権利関係 の解説
問題
相続に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
- 無権代理人が本人に無断で本人の不動産を売却した後に、単独で本人を相続した場合、本人が自ら当該不動産を売却したのと同様な法律上の効果が生じる。
- 相続財産に属する不動産について、遺産分割前に単独の所有権移転登記をした共同相続人から移転登記を受けた第三取得者に対し、他の共同相続人は、自己の持分を登記なくして対抗することができる。
- 連帯債務者の一人が死亡し、その相続人が数人ある場合、相続人らは被相続人の債務の分割されたものを承継し、各自その承継した範囲において、本来の債務者とともに連帯債務者となる。
- 共同相続に基づく共有物の持分価格が過半数を超える相続人は、協議なくして単独で共有物を占有する他の相続人に対して、当然にその共有物の明渡しを請求することができる。
正解
正解は選択肢 4 です。
解説
正解は選択肢4です。共有物の明渡し請求は、共有物の管理行為(民法252条本文)の中でも、共有者間の公平を著しく害する可能性があるため、判例上、保存行為(民法252条ただし書)にはあたらないとされています。したがって、持分が過半数を超える共有者であっても、単独で他の共有者に対して共有物の明渡しを請求することはできません。
【選択肢1】判例(最判昭和40年6月18日):無権代理人が本人を相続した場合、無権代理行為は有効となるという信義則上の制約に関する判例。 【選択肢2】判例(最判昭和38年2月22日):共同相続人の一人が自己の相続分を超えて単独登記をした場合、他の共同相続人は自己の相続分については登記なくして第三者に対抗できるという判例。 【選択肢3】民法427条(連帯債務の原則)、民法430条(連帯債務の相続)、判例(最判昭和34年6月19日):連帯債務者が死亡した場合の相続人への債務承継に関する規定と判例。 【選択肢4】民法252条本文(共有物の管理)、民法252条ただし書(保存行為)、判例(最判昭和39年5月19日、最判平成10年3月24日):共有物の明渡し請求が保存行為にあたらないことを示す判例。
【選択肢1】正。無権代理人が本人に無断で本人の不動産を売却した後に、単独で本人を相続した場合、無権代理人は本人の地位と無権代理人の地位を兼ねることになります。この場合、無権代理人が本人として追認を拒絶することは、信義則(民法1条2項)に反すると解されています(最判昭和40年6月18日)。したがって、無権代理行為は有効なものとして扱われ、本人が自ら当該不動産を売却したのと同様な法律上の効果が生じます。 【選択肢2】正。共同相続された不動産は、遺産分割がされるまでは共同相続人全員の共有に属します。共同相続人の一人が、自己の相続分を超えて相続財産である不動産につき単独名義の所有権移転登記を了した場合、その登記は自己の相続分を超える部分については無効です。この無効な登記に基づいて不動産を取得した第三者に対し、他の共同相続人は、自己の相続分については、登記なくして当該不動産の所有権を対抗することができます(最判昭和38年2月22日)。これは、単独登記をした共同相続人は、自己の持分を超える部分については無権利者であり、その無権利者から取得した第三者も、その部分については無権利者であるため、他の共同相続人は自己の持分を登記なくして対抗できる、という考え方に基づきます。 【選択肢3】正。連帯債務者の一人が死亡し、その相続人が数人ある場合、連帯債務は相続によって分割されます。各相続人は、被相続人の債務のうち、自己の相続分に応じた部分を承継します(民法427条、430条)。そして、承継した債務は、元の連帯債務の性質を維持するため、各相続人は、自己の相続分に応じた債務について、他の連帯債務者(被相続人以外の元の連帯債務者)とともに連帯債務者となります(最判昭和34年6月19日)。 【選択肢4】誤。共有物の管理に関する事項は、原則として各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決定します(民法252条本文)。しかし、共有物の明渡し請求は、共有物全体を排他的に占有する行為であり、他の共有者の占有を排除するものです。判例は、このような共有物の明渡し請求は、共有物の現状を維持する「保存行為」(民法252条ただし書)にはあたらないと解しています(最判昭和39年5月19日、最判平成10年3月24日)。したがって、持分価格が過半数を超える相続人であっても、単独で共有物を占有する他の相続人に対して、当然にその共有物の明渡しを請求することはできません。明渡しを求めるには、共有者間の協議や、共有物分割請求訴訟などの手続きが必要となります。