宅建 平成29年度(2017年)問10 権利関係 の解説
問題
①不動産質権と②抵当権に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。
- ①では、被担保債権の利息のうち、満期となった最後の2年分についてのみ担保されるが、②では、設定行為に別段の定めがない限り、被担保債権の利息は担保されない。
- ①は、10年を超える存続期間を定めたときであっても、その期間は10年となるのに対し、②は、存続期間に関する制限はない。
- ①は、目的物の引渡しが効力の発生要件であるのに対し、②は、目的物の引渡しは効力の発生要件ではない。
- ①も②も不動産に関する物権であり、登記を備えなければ第三者に対抗することができない。
正解
正解は選択肢 1 です。
解説
正解は選択肢1です。不動産質権の利息は民法347条により満期となった最後の2年分のみ担保されますが、抵当権の利息は民法375条1項により原則として担保されます。選択肢1の「抵当権では、設定行為に別段の定めがない限り、被担保債権の利息は担保されない」という記述は、抵当権の被担保債権の範囲に関する民法の規定に反するため誤りです。
・民法347条(不動産質権の被担保債権の範囲):不動産質権については、利息は、満期となった最後の2年分についてのみ担保される。 ・民法375条1項(抵当権の被担保債権の範囲):抵当権は、元本、利息、違約金、債務の不履行によって生じた損害の賠償及び抵当権の実行の費用を担保する。 ・民法375条2項(抵当権の被担保債権の範囲の制限):前項の利息その他の定期金については、その満期となった最後の2年分についてのみ抵当権を行使することができる。 ・民法360条1項(不動産質権の存続期間):不動産質権の存続期間は、10年を超えることができない。10年を超える期間を定めたときは、その期間は10年とする。 ・民法342条(質権の内容):質権者は、その債権の担保として債務者又は第三者から受け取った物を占有し、かつ、その物について他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。 ・民法344条(質権の設定):質権の設定は、債権者にその目的物を引き渡すことによって、その効力を生ずる。 ・民法369条1項(抵当権の内容):抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。 ・民法177条(不動産に関する物権の変動の対抗要件):不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
【選択肢1】誤。 不動産質権については、民法347条により、利息は満期となった最後の2年分についてのみ担保されます。これは記述の通りで正しい内容です。この規定は、不動産質権が長期にわたる場合に、利息が際限なく膨らむことを防ぎ、後順位の権利者や第三取得者を保護する趣旨があります。 一方、抵当権については、民法375条1項が「抵当権は、元本、利息、違約金、債務の不履行によって生じた損害の賠償及び抵当権の実行の費用を担保する」と明確に規定しており、設定行為に別段の定めがなくても利息は担保されるのが原則です。ただし、民法375条2項により、後順位抵当権者や第三取得者との関係では、利息その他の定期金は満期となった最後の2年分についてのみ抵当権を行使できるという制限があります。これは、登記簿に利息の額を全て記載することが困難であることや、後順位の権利者等が不測の損害を被ることを防ぐための規定です。したがって、「設定行為に別段の定めがない限り、被担保債権の利息は担保されない」という記述は、抵当権の被担保債権の範囲に関する民法の規定に反するため誤りです。 【選択肢2】正。 不動産質権の存続期間については、民法360条1項に「不動産質権の存続期間は、10年を超えることができない。10年を超える期間を定めたときは、その期間は10年とする。」と明確に定められています。これは、不動産質権が目的物の占有を移転させる性質上、長期にわたると不動産の利用が阻害されることを防ぐための制限です。 これに対し、抵当権には、民法上、存続期間に関する制限は設けられていません。抵当権は目的物の占有を移転しないため、不動産の利用を阻害する心配がないからです。したがって、この記述は正しいです。 【選択肢3】正。 質権は、債権者がその債権の担保として債務者又は第三者から受け取った物を占有することによって成立する物権です(民法342条、344条)。不動産質権も質権の一種であるため、目的物である不動産の引渡し(占有の移転)が効力の発生要件となります。これは、質権の公示方法が占有であるためです。 これに対し、抵当権は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について設定される物権です(民法369条1項)。抵当権は、目的物の引渡しを必要とせず、登記によって公示されることで効力を生じます。したがって、この記述は正しいです。 【選択肢4】正。 不動産質権も抵当権も、不動産を目的とする物権です。不動産に関する物権の得喪及び変更は、民法177条により、不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ第三者に対抗することができません。これは、不動産取引の安全と円滑を図るための重要な原則であり、登記によって権利関係を明確にすることで、第三者が不測の損害を被ることを防ぎます。したがって、不動産質権も抵当権も、登記を備えなければ第三者に対抗できないという記述は正しいです。