宅建 平成23年度(2011年)問6 民法 の解説

問題

Aは自己所有の甲建物をBに賃貸し賃料債権を有している。この場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

  1. Aの債権者Cが、AのBに対する賃料債権を差し押さえた場合、Bは、その差し押さえ前に取得していたAに対する債権と、差し押さえにかかる賃料債務とを、その弁済期の先後にかかわらず、相殺適状になった段階で相殺し、Cに対抗することができる。
  2. 甲建物の抵当権者Dが、物上代位権を行使してAのBに対する賃料債権を差し押さえた場合、Bは、Dの抵当権設定登記の後に取得したAに対する債権と、差し押さえにかかる賃料債務とを、相殺適状になった段階で相殺し、Dに対抗することができる。
  3. 甲建物の抵当権者Eが、物上代位権を行使してAのBに対する賃料債権を差し押さえた場合、その後に賃貸借契約が終了し、目的物が明け渡されたとしても、Bは、差し押さえにかかる賃料債務につき、敷金の充当による当然消滅を、Eに対抗することはできない。
  4. AがBに対する賃料債権をFに適法に譲渡し、その旨をBに通知したときは、通知時点以前にBがAに対する債権を有しており相殺適状になっていたとしても、Bは、通知後はその債権と譲渡にかかる賃料債務とを相殺することはできない。

正解

正解は選択肢 1 です。

解説

正解は選択肢1です。債権が差し押さえられた場合、第三債務者は、差し押さえ前に取得した債権であれば、その弁済期の先後にかかわらず、相殺適状になった段階で相殺し、差押債権者に対抗できるとする判例(最判昭和45年6月24日)の趣旨に基づいています。

民法505条(相殺の要件)、民法467条(債権譲渡の対抗要件及び相殺)、民法372条(抵当権の準用)、民法304条(物上代位)。 * **民法505条(相殺の要件)**:二人が互いに同種の債務を負担する場合、双方の債務が弁済期にあるときは、相殺によってその債務を消滅させることができる。ただし、債務の性質が相殺を許さないときは、この限りでない。 * **民法467条2項(債権譲渡と相殺)**:債務者は、対抗要件具備時より前に取得した譲渡人に対する債権による相殺をもって譲受人に対抗することができる。 * **民法372条(抵当権の準用)**:抵当権には、その性質に反しない限り、先取特権に関する規定(物上代位など)が準用されます。 * **民法304条(物上代位)**:先取特権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても行使することができる。ただし、先取特権者は、その払渡し又は引渡しの前にこれを差し押さえなければならない。 * **最判昭和45年6月24日**:差押えの第三債務者は、差押え前に取得した債権であれば、その弁済期が差押えにかかる債務の弁済期より後であっても、相殺適状になった段階で相殺し、差押債権者に対抗できる。 * **最判平成13年3月13日**:抵当権の物上代位による差押えの場合、第三債務者は、抵当権設定登記後に取得した債権では、抵当権者に対抗して相殺することはできない。 * **最判平成14年3月28日**:抵当権者が物上代位権を行使して賃料債権を差し押さえた場合でも、賃貸借契約が終了し、目的物が明け渡されたときは、敷金が未払賃料に充当されることによる賃料債務の消滅を、抵当権者に対抗できる。

【選択肢1】正。 AのBに対する賃料債権がCによって差し押さえられた場合、Bは、差し押さえ前にAに対して取得していた債権をもって、差し押さえにかかる賃料債務と相殺することができます。この際、Bが取得していた債権の弁済期が、差し押さえにかかる賃料債務の弁済期よりも後であっても、相殺適状になった段階で相殺し、差押債権者Cに対抗できるとされています(最判昭和45年6月24日)。これは、差押えの効力発生時を基準として、第三債務者の相殺の期待を保護する趣旨です。したがって、本選択肢の記述は正しいです。 【選択肢2】誤。 抵当権者Dが物上代位権を行使してAのBに対する賃料債権を差し押さえた場合、BがDの抵当権設定登記の後に取得したAに対する債権をもって、差し押さえにかかる賃料債務と相殺し、Dに対抗することはできません(最判平成13年3月13日)。物上代位の場合、抵当権者は抵当権設定登記によってその権利を公示しており、登記後に取得された債権による相殺を認めると、抵当権者に不測の損害を与える可能性があるためです。したがって、本選択肢の記述は誤りです。 【選択肢3】誤。 抵当権者Eが物上代位権を行使してAのBに対する賃料債権を差し押さえた場合でも、賃貸借契約が終了し、目的物が明け渡されたときは、敷金が未払賃料に充当されることによる賃料債務の当然消滅を、抵当権者Eに対抗することができます(最判平成14年3月28日)。敷金は、賃貸借契約終了・明渡し時に未払賃料等に充当されるという法的性質を持つため、その充当による賃料債務の消滅は、差し押さえの有無にかかわらず当然に生じると考えられています。したがって、本選択肢の記述は誤りです。 【選択肢4】誤。 AがBに対する賃料債権をFに適法に譲渡し、その旨をBに通知した(対抗要件を具備した)場合、Bは、通知時点(対抗要件具備時)以前にAに対する債権を取得していれば、その債権をもって譲渡にかかる賃料債務と相殺し、譲受人Fに対抗することができます(改正民法467条2項)。改正民法では、対抗要件具備時より前に取得した債権であれば、その弁済期が譲渡された債務の弁済期より後であっても、相殺適状になった段階で相殺できるとされています。本選択肢は「通知後はその債権と譲渡にかかる賃料債務とを相殺することはできない」としているため、誤りです。

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